支持足がアンディオールしにくい理由。大人が知るべき動作足との比較。

支持足と動作足。
なぜ、支持足・支持側が難しいのか。
大人ほど知るべき “運動連鎖” の存在。

 

本ページに記載の(図)に関しては、大雑把にイメージするものとして書いてある。
厳密な詳細については、専門のイラストなどをご覧いただきたい。
ここではあくまで、大まかなイメージ図として掲載していることをご了承いただく。

 

 

序論:支持足の重要性

バレエにおいて「支持足(脚)」(以降、支持足と記す)、「動作足(脚)」(以降、動作足と記す)が、それぞれ存在する。

また、トレーニング等においても、立位のもの、それ以外のものとがある。

 

支持足がなぜ重視されるのか、なぜ難しいのかと、それぞれを示す専門用語をバレエに活用する目的で解説する。

 

 

 

 

本論1:OKCとCKC

バレエに活用しやすいよう、必要最小限に留めて説明をする。

 

まず、運動連鎖(kinetic chain)から。

 

これは、後ほど述べる OKCとCKC の2つに分類される。

運動連鎖とは「ある関節の運動が、他の隣接する関節へ影響を及ぼす」ことである。

 

もっと具体的に説明する。

 

私たちは、1つのことを改善すると、副産物として、他のいくつかのことも改善するといった「くさりのような繋がり」を持っている。

例えば、骨盤ポジションを正しくすると、大腿部の位置や向きなどにも改善がみられる、といった具合である。

「おまけ」がついてくるように、本題以外のモノが手に入ると思えば良い。

これは、「良い例」である。

 

もちろん、悪い意味での「くさりのような繋がり」もある。

1つの誤った関節の動かし方が、複数の誤りを引き起こす。

上体が前に被ってくると、脚が引けてしまう、膝を押し込んでしまう、といった具合だ。

悪い意味での「おまけ」が満載だ。

 

いずれにせよ「くさりのような繋がり」によって、複数の「おまけ」がついてくる。

これが「運動連鎖」と思っていただければ良い。

 

 

では、ここからは OKCとCKC について説明する。

長くなるが、頑張って読んで欲しい。

 

 

OKC=open kinetic chain (オープンキネティックチェーン)、開放運動連鎖

 

遠くに位置している関節が、自由に動くことが出来る状態での運動。

末端部分、足や手が固定されていない状態を指す。

 

つまり、バレエでいうと動作足がOKCとなる。

 

動作足は、床に固定されておらず、足裏は床から離れており、自由に動かすことが出来る。

仰向けやうつ伏せ、座位でのエクササイズなども、OKCであり、足部末端は床に固定されていない。

 

 

 

 

CKC=closed kinetic chain (クローズドキネティックチェーン)、閉鎖運動連鎖

 

遠くに位置している関節が、固定されている状態での運動。

要は、末端が固定されている状態のことで「支持足」が、これに当たる。

 

立位、立っている時、支持足と捉えれば良い。

 

ちなみに「手」に関して言うと、「腕立て伏せ」は手が床に固定されているのでCKCである。

とはいえ、バレエにおいて「手が固定されている」ことはない。

従って、足部が床に着いているか否かの判断で十分だ。

 

 

念のために述べておくが、バーを持つ手は、CKCと言えるであろうか。

答えは、NOである。

 

CKCの条件は「固定」であって、「触れること」ではない。

バーを正しく活用しているのであれば、バーを持つ手を終始、固定し続けることはないはずで、常に「調整」しているはずである。

腕立て伏せのように、手を固定し、バーを持っている手に体を合わせる動き方は、間違いであることを記しておく。

 

 

 

 

本論2:メリット・デメリット

OKCは、ターゲットとする筋をピンポイントで鍛えたい時などに適している。

しかも、体重による影響が少ないため、負荷が軽い状態で動くことが可能である。

 

 

 

怪我をしていても、体重の影響が少ないOKCであれば、トレーニングが可能な場合もある。
(医師の判断を仰いだ上で実施すること)

長期間の休み明けや、初期のリハビリなどにも適している。

 

ただし、あくまでピンポイントになるので、実際の立位時における動かし方を覚えることには、適していない。

また、全身に刺激を送ろうとする場合、局所的故に1つ1つ行わねばならない為、時間もかかる。

 

しかし、ピンポイント・局所的に刺激を送ることを考えれば、特定の筋の出力や強化、感覚が薄く体感が得られない、関節の動きを再教育するといった目的には、大いに役立ってくれる。

 

 

一方CKCは、複数の関節や筋を使いながら「複合性を持って」動いていく。

つまり、実際の生活やバレエに近いものである。

 

非常に複合性が高く、故に、複雑で難度も高い。

 


(↑床の設置面が狭くなるほど、難度が高くなることに着眼したい)

 

 

複合性の例をみてみよう。

 

ルルヴェをする、これは CKC の動作である。

かかとを上げ下げする動作において、直接関与しているのは足部であるが、姿勢を保持しようとする時、腹部や腰背部といった体幹部にも刺激が入る。

これが「複合性」であり、CKCの特徴である。

 

従って、厳密なポジション、厳密な姿勢が必要とされる。

複合性が高いということは、プラスが積み重なれば良い影響を受け取ることが可能だが、その逆もあることを忘れてはならない。

 

トレーニングやレッスンを、やってもやっても結果が出ないケースは、この可能性がある。

厳密なポジションや姿勢が取れないと、ターゲットとしている筋に刺激が入らず、逃げてしまうことが多くなるためである。

 

 

 

 

結論:目的と難度、そして、重要性

OKCとCKC、どちらが良いのか。

そういった話ではない。

 

 

目的に沿って選択すること。

これが最善である。

 

エクササイズやトレーニングは、初心者はOKCからはじめるべきだと考える。

また、上級者においても、感覚が弱い部位に関しては、積極的にOKCを取り入れ、ピンポイントで刺激を入れることが望ましい。

 

しかし、動きは局所的な筋の働きだけで、構成されているのではない。

OKCからCKCに発展していくことが必要である。

 

また、バレエでいうならば、OKCである動作足よりも、CKCである支持脚、支持側を改善することは、難度が高い。

まず、CKCで課題とすることをOKCで行った後、CKC、つまり、支持足・支持側で行うと良い。

 

支持足・支持側というのは、複合性が高くなる故に、課題となっている部位だけでなく、全身を観察した上でのファクターを見つけることが求められる。

 

複数のファクターを、どのような順序で、どのような道筋によって、改善を目指すのか。

そうしたことも、必須項目である。

 

CKCの改善は、いきなり取り組むよりも、一度、ノートで整理するといいだろう。

ファクター、順序、道筋。

 

闇雲に行動すると、望まない癖や運動連鎖を引き起こすこともある。

知的に行動を起こすこと。

これが、ポイントである。