「カカトを前へ」3つの意味と、ありがちなカン違い

 

形は似ている。
ほぼ一緒だ。
だが、偽物は必ず崩れるときが来る。

 

序論:どちらでしょう?

指導言語には、言葉通りに受け留めるべきものと、そうでないものがある。

「カカト前」は、どちらに当たるのだろうか。

 

本稿では、「カカトを前へ」という指導言語について述べようと思う。

 

 

 

本論:「カカトを前へ」3つの意味と、ありがちなカン違い

本論1:「カカト前」3つの意味

 

バレエにおいて、カマアシは厳禁である。

脚のラインが途切れることで、短く見えてしまうという”外観上の問題”と、支持足において、事故やケガのリスクが非常に高くなるからだ。

 

故に、教師は「カカトを前にしなさい!」という指導言語を用いて

①カマアシという外観の回避

②事故や怪我のリスクヘッジ

 

そして、もう1つ

③足部のアンディオール

 

この3つの項目を一度に実現させようとする。

つまり、教師が用いる指導言語「カカトを前にしなさい」には、少なくとも3つの意味が含まれていることを認識しよう。

 

 

 

 

本論2:絶対に避けねければならないこと

 

 

カカトが僅かに前に出た、足首からつま先にかけての”ポイント”は、とても美しいラインを描き出す。

この「足部のアンディオール」は、アンディオールを構成する要素の1つである。

 

 

機能面を掘り下げてみよう。

 

足部のアンディオールは、適切に行うべきである。

そうでなければ、カマアシとは別のリスクを伴う。

 

筋がどんなに強かろうと、方法が適切でない場合、リスクが高まることを忘れるべきではない。

エクササイズや筋トレは、手助けにはなるが、それ「だけ」でよくなるわけではない。

 

最も起きやすい”危険”は、外くるぶし周辺を「詰めて」しまうことにより、足首に対するリスクがグッと上がってしまうことである。

これは、”できるだけ”ではなく、「絶対に」避けるべきである。

 

トウシューズでフルポイントに立ち、体重がかかっている。

その外くるぶしを詰めていたとしてら…ゾッとする結末が待ち構えているのだ。

 

 

 

 

本論③:観察しよう

 

ここでは、最も多い”カン違い”について説明しよう。

 

長座に座り、脚はパラレル。

両くるぶしの間は、こぶし1つ分開け、軽くポイントにする。

 

今は”パラレルポジション”である。

いわゆる「カカト前」の方向をパラレルで行うと、カカトがわずかに内側に位置した状態となる。

ここでは、内側に位置した状態を「カカト前」と表現する。

 

 

 

では、実験を始めよう。

 

パラレルから、つま先の位置を変えずに、カカトを内側に移動させてみよう。

「僅か」で良い。

 

正しく出来ていれば、足首から足部内側に張りを感じるだろう。

この状態であれば外観が良いだけでなく、事故や怪我のリスクをかなり軽減することが出来る。

 

 

 

もう1つの”カン違い”パターンを試してみる。

 

パラレルから、カカトの位置を変えずに”つま先”を外側に移動させてみよう。

これでも、先程と似たような形にはなる。

 

とはいえ、状況は全く異なる。

足首・足部外側にテンションがかかり、非常にリスクが高い状態である。

 

 

先ほど行った実験は、足全体(足裏・足指・甲)を育てることが出来る。

後者には、そうした”育成”が出来ないことを知っておいて欲しい。

 

 

 

結論:未来を変える

同じような形でも、手順や過程によって

 

▶︎体が受けるリスク

▶︎身体機能回復の有無

 

これらは、全く異なることを知っていただきたい。

結果として「未来」を変えてしまうことも。

 

「カカトを前に」に関しては、言葉通りに受け止めることが必要である。

「カカトを前に」であって、「つま先を動かす」ではない。

教師は、相対的な結果を望んでいるのではない。

 

 

手順や過程は、あなたが思うよりも、ずっと大きな影響を持つ。

その先の結果として、どんな未来が欲しいのか。

忘れずにいたいものである。

 

 

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