真意は
意外とシンプルかも知れない。
序論:よく耳にする言葉
バレエには、大きいジャンプもあれば、小さいジャンプもある。
それぞれ、「魅せるもの」は違えど、「跳ぶ」という動作であることには違いない。
前者は、グランジュッテやグランパデシャ(グランソデシャ)などがあり、後者には、アッサンブレやジュッテなど、アレグロでの動作が並ぶ。
こうしたジャンプ動作において、跳ぶ「直前」に ”床を蹴る” という指導言語が登場することがある。
何を伝えたいのか、何を意味しているのか、何を要求されているのか。
本稿では、ジャンプ動作での”床を蹴る”という指導言語について、順序と考え方を述べる。
本論:ジャンプ動作での”床を蹴る”|順序と考え方
本論1:アッサンブレにおいての「床を蹴る」
アッサンブレを行う際に求められる「床を蹴る」は、大抵、支持脚のことを指摘している。
「床を蹴る」ことによって
▶︎支持脚をしっかりと伸ばしましょう…特に、膝とつま先
▶︎床から離れて、しっかりと跳び上がりましょう
といった意味を持つ。
両方の意味を、もう少し詳しく述べると
・床から離れ、しっかり跳び上がることで、床からの「距離」が生まれる。
↓
・膝とつま先が伸ばしやすい状態となるわけだから、支持脚をしっかり伸ばしましょう。
ということだ。
従って、「床をどんなに蹴っても」空中で膝やつま先が伸びていないならば、床を蹴っているとは判断されない。
ここまでのまとめ
①床から離れ、しっかりと跳ぶために「上体を先に、上方移動」させる。
②空中で、膝とつま先をしっかりと伸ばす。見せる。
本論2:グランジュッテにおいての「床を蹴る」
「床を蹴って」と要求される動作に、次のようなものがある。
グランジュッテの例である。
グリッサードから踏み切り、片脚がグランバットマン・デヴァン(前)に上がり始め、もう片方の脚はプリエ。
体が空中に上がり、ジャンプが始まってから、ようやく、プリエの膝が伸びだそうとする。
このケースで「床を蹴って」と指摘される場合、何を注意したら良いのだろう。
文章に起こすとわかりにくいが、グランジュッテのパターンは、大人から「はじめた人」に多い。
ここでの問題は、膝を伸ばすタイミングが遅すぎることだ。
プリエで生産した「エネルギー」をジャンプに変換することができず、空振りに終わってしまう。
さらには、後ろに出した脚が伸びきらず、曲がってしまう。
「プリエ→ジャンプ」ではなく、「プリエとジャンプ」になってしまっている。
つまり、ここでいう「床を蹴って」とは、プリエで得た力をジャンプの原動力にすることを求められている。
●プリエで最も大切にしたいこと、概念・考え方については、こちらの記事をお読みいただきたい●
グランジュッテでは、”上方および前方” に体が移動する。
グランバットマン・デヴァンで上げ始まると同時に、もう片方の膝も伸び始める。
最も高く体が上がった時に、後方の脚の膝はすでに伸びていなければならなず、前に上がった脚の高さをキープ(保持)したまま、後ろのグランバットマンを行うことが必要だ。
もちろん、ジャンプが加わった上でこれを行う。
ここまでのまとめ
①移動を伴う大きなジャンプでは、体が上方+指定の方向に移動する。
②踏み切りの脚が床から離れるまでに、膝が伸びる。
結論:何の為のプリエかを思い出す
「床を蹴る」という言葉で要求されていることは、大方、脚を伸ばすこと・プリエのエネルギーをジャンプに変換させることである。
その為には、
▶︎上体が先導して跳び上がる
▶︎上体を適切に移動させる
▶︎空中で膝とつま先を伸ばす
この3つを押さえよう。
上体が上がっていないのに、ジャンプをしようとする(=床に近いところから跳ぼうとする)と、床を蹴ることが出来ないだけでなく、膝やつま先が伸びにくい。
重さが足元にかかる分、体感としては「床を蹴っている」と勘違いしやすいが、これは、床を蹴るではないので要注意だ。
同じように、グランジュッテのような移動を伴うジャンプの場合、上体が適切に移動せず、その場にとどまってしまうと、膝を曲げたまま脚を上げてしまう。
「床を蹴って」
もちろん、膝とつま先を空中でピンッと伸ばすことが求められているが、その為には、適切な上体の移動が必要不可欠である。
「プリエ→ジャンプ」
「と」はいらない。
もう一度、思い出そう。