それは、体から送られた合図なのだ。
何か、間違っている
気づけ、と。
序論:大人の踊り、老けた踊り
老けて見える事と、実年齢を重ねる、を一緒にすべきではない。
少なくとも、バレエにおいては。
ヒトは、実際に歳を重ね、老いていく。(老ける、ではない)
その過程で得た素養が、踊りに現れ、いい味わいを出す事がある。
老けた踊り方というのは、違う。
実年齢よりも老いて”見える事”を指す訳で、決して、良い意味ではない。
さらに、老けた踊り方というのは、何かが間違っていますよ!と、合図を出している状態である。
これを見逃すべきではないだろう。
本稿では、大人のバレエだからこそ留意したい、老けた踊り方について述べる。
本論:体が合図を出している|老けた踊り方にご用心
本論1:老ける=見た目の印象
老けると聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
・実年齢よりも年長に見える。
・活気がない。
・力の衰えが見える。
容姿や見た目から受ける印象に対して示す言葉である。
実際の年齢のことではない。
お歳を重ねても、若々しく、快活である方は、たくさんいらっしゃる。
逆に、子供でもこんな踊り方をしている場合がある。
・子供っぽい踊り方
・大人っぽい踊り方
・老けた踊り方
この3つは、大人にも当てはまる。
それぞれ、意味が少しずつ違う事が伝わるだろうか。
全て、実年齢ではなく、踊りを見た時の”見た目”の印象である。
本論2:人の目は、上半身に集中しやすい
バレエでいうところの老けた印象は、どこから来るのだろうか。
正しく体を動かす事ができていれば、老けた印象になる事はない。
「大人」ではなく、「老けて見える」という事は、必ず間違いが存在する。
老けて見える代表的な例をあげてみよう。
▶︎頭が前に突き出ている、垂れている。
▶︎肩が前に出てしまい、胸が落ちている。
▶︎手指の力がなく、垂れてしまっている。
「垂れる・落ちる」は、要注意ワードである。
化粧品などのコマーシャルで「たるみ」という言葉を耳にする。
年齢によって弛み、下がってしまったものを、化粧品の力で上げましょう!という訳だ。
当たり前だが、地球上には重力が存在し、年齢を重ねているほど、その影響を受け続けている事になる。
だからこそ、「垂れる・落ちる」という言葉は、年齢を示す一つの言葉として、使われる事が多いのである。
という事は、バレエでは特に、「垂れる・落ちる」を想像させてはならない。
その結果、”美しい” に繋がることを整理したい。
もう1つ。
人の視線は、上半身に集まり易い。
バレエという踊りの性質上、どうしても脚にばかり気がいくだろうが、印象を決定付けるのは、上半身である。
上半身が間違った位置をとっている時、老けて見える事を、頭の片隅に入れておこう。
本論3:手指に必要なこと
1つずつみていこう。
頭が前に出てしまっているのであれば、
・頭を立ててまま、後ろに軽く押す。
↓
・首の後ろを立てる。
肩が前に出てしまっているのであれば、
・肩の向きと位置を確認し、後ろにとる。
↓
・背中を平らにする。
厄介なのは、手指である。
バレエポジションにおいての手指は、決して、力を必要以上に込め、指を反り返らせることではない。
求められているのは、”伸ばす”である。
手指に力を入れると言っても、伸ばす以上に力を入れる事を言っているのではない。(注1)
力の使い方については、こちらに記載している。
読む読まないは、あなたにお任せするが、知っている・知らないが、理解を大きく分ける事と思う。
その上で、大人のクラスで、手指が反るほど伸ばしている人は少ない。
この場合、過剰に力は使いすぎているけれども、害になる事はない。
ほとんどの場合、手指は丸まり、まるで他人の指をつけているかのように垂れ、神経が行き届いていない印象を受けてしまう。
この問題には、生理現象が絡んでいる。
バレエの特色の1つと言っても良い、体の動かし方がここにある。
特に、アラセゴンやアンオーで手首が伸び切ってしまい、形を作れない。
指定の形をとろうとすると、なぜか、指先が丸まってしまう。
先生には、「腕をまるく!」と言われ、気をつけているが、そうはならない。
生理現象を抑制せず、そのままにしておくと、バレエではこうした支障が出てくる。
言われた事をやろうとしていない場合は、まずは、やってみる。
指先を伸ばし、手首は適度に曲げ、指定の形をとろうとする。
それでもうまくいかない場合は、生理現象の抑制が出来ているかが鍵となる。
生理現象というのは、意識的にしていることではない。
従って、特段、自分を責めるのもナンセンスである。
然るべきトレーニングで、コントロールを覚えよう。
結論:いつからでも改善できる
老けた踊り方というのは、見た目から受ける印象であって、実年齢のことではない。
従って、あなたが変えようと思えば、いつからでも改善する事が可能である。
老けた踊り方を避けるには、上半身を正しく保つ事。
それは、大人用の構えであって、子供用の “体に合わない事” をやってはならない。
その上で、生理現象の抑制が必要な場合は、レッスン外で、予め準備しておく。
バレエでは、ADL(日常生活動作)においての正常機能を、発展・応用させていく事がほとんどだが、バレエに特化したアイテムが必要な場合もある。
手指コントロールは、ここに属する。
体から送られた合図を、受け入れてあげよう。
対処法があるのだから。
ここは、”バレエ仕様” が必要な範囲である。
注1:末梢神経に問題があったり、全身の筋活動レベルが低いなどの場合は、反り返ってでも力を発揮する事が必要な場合もある。