レッスンで重要な目的は、先生になおしてもらうことではない。
レッスンで重要な目的は、あなたが上手にこなせることではない。
敢えて言わせていただこう。
バレエは体を動かすものだ。
”自分が思っていること” と “実際に起きていること(事実・fact)” ここには大きなズレがある。
あなただけでない、誰にでもある。
私にもある。
だからこそ、鏡で「ズレ」がどこにどの程度あるのかを確認する。
それでも、ズレていることが多いから、教師の客観的指摘に耳を傾ける。
こうして、感覚とのズレを1ミリでも埋めようとする。
それが「レッスン」だ。
レッスンの本質とは、ピルエットがたくさん回れるようにだとか、脚を高く上げられるようにだとか、引き上げがどう、アンディオールがどう、そうしたことではない。
極論、自分の感覚のズレと実際が、1ミリも狂わずにできるのであれば、思い通りに体を動かせる=どんなこともできてしまうだろうから。
大人が、頭の片隅に入れておくと、じわりじわりと “効いてくる” ことがある。
全てに当てはまることだから、あなたにはお伝えしよう。
引き上げの弱点 ~起こりうる認識不一致~
はっきりさせよう
[お腹が出ている、お腹を引き上げて] といわれるシーンを例に整理していこう。
体のパーツ(部位)をどこ基準で認識している人が多いかというと、圧倒的に「頭や胸」が多い。
脳があるからなのか、心臓が入っているからなのか、真意はわからない。
いずれにせよ、ここを無意識に基準にしている人がとても多い。
つまり、こういうこと。
頭や胸よりも前にあれば「前」だし、頭や胸よりも後ろにあれば「後ろ」。
これは、経験がある教師ならば、よくよく見かけることなのではないかと思う。
例えば、”お腹が出ている” というのが、どういう状況か考えてみよう。
大人だと多い「ポッコリお腹」。
定義は人それぞれだと思うが、少なくともバレエの世界においては、骨盤前面や肋骨よりも腹部が出ていたら「お腹が出ている」にはなる。
それは、立っているときも、仰向けで寝ているときも、座っているときも、どんな姿勢であれ「出ているものは出ている」のだ。
体前面の肋骨から恥骨に面を作ったとして、その面よりも出ていたら「お腹が出ている」。
逆に出ていなければ、「出ていない」。
まず、ここがこの話の前提となる。
”つもり”から脱却するために
図を見てほしい。
左側が、お腹が出ていない例。
右側は、お腹が出ていると指摘される例である。
この図だけ見ていると、なんの疑問も持たないかもしれない。
右の例の場合、何が問題かというと「お腹が出ているということを理解できない点」にある。
多くの人が、何を判断基準にしているかを思い出してみよう。
そう、頭や胸だ。
頭といっても、ほとんど「顔」を基準にしている。
すると、右の図では顔の面よりお腹が出ていないことになる。
この図は極端にしてあるが、こうした姿勢の場合、お腹よりも胸の方が前に突き出しているのが相場である。
この状況だと、本人としては「お腹が出ている」と認識することが難しいようだ。
認識が難しいということは、教師がどんなに指摘をしても “右から左へと話が流れて” しまう。
さらには、コミュニケーションの問題へと発展してしまうのが厄介なところだ。
まとめ:問題の本質
こうした問題の本質は、ビジョンがないことを意味している。
今回取り上げた例でもっとも重要なのは、「お腹をださない」ことではない。
もちろん、堂々とお腹を突き出しているよりかはずっといいが、本質ではない。
”目指す立ち方を理解できていない” というのが、もっとも大きな問題点だ。
これは「引き上げ」という指導言語を多用してしまう危険性を暗示している。
引き上げという抽象的な言葉で全てを解決しようとすると、こうした問題が発生しやすい。
こうした問題を避けるためにも
▶︎何が、どこにくればいいのか
▶︎どうなっていればいいのか
位置や角度をはっきりさせておく必要がある。
自分ではやっているつもりだけど、同じ指摘をずっと受けるような場合は、こうしたことを確認することが一番早い。
稽古場には「鏡」という、確認にもっとも適したツールがあるのだから、積極的に使いこなそう!
●引き上げに必要な筋を目覚めさせよう!
▶︎https://juncotomono.info/program/20210706-11-iliacus/
スタジオでもおうちでも。
今日一回だけ
全身を鏡で見てみよう!