バレリーナの脚と膝の押し込み

バレリーナのしなる脚は、健康にいい。
ただし、押し込みでなければ。

 

序論:バレリーナの脚と大人のバレエ

バレリーナの脚は、”しなるような、エックス脚のような”  特徴的な形状がみて取れる。

過伸展とは別物である。

バレリーナのしなる脚と過伸展の違いを認識していないと、さも危険な脚と言われるが、バレリーナの脚は、発達すべき筋と操作性によって得られた、合理的かつ「健康に良い」脚である。

しかしながら、大人のバレエで問題になるのは、しなる脚ではなく「過伸展」である。

ここでは、過伸展とバレリーナの脚の違いについて、少しだけ解説する。

 

 

本論:色々な膝を伸ばす

まずは、バレリーナの脚と過伸展は、「別物」だということを、認識すべきである。

そしてなぜ、バレエレッスンにおいて、教師から再三にわたり「膝を押し込まないで!」というサジェストが出るのかも、しっかりと理解してほしい。

 

 

 

本論1:「当たり前」から逃げるな

教師が「膝を押し込まないで!」と指摘する理由は、大きく2つに分けられる。

▶︎危険だから

▶︎バレエでの膝の伸ばし方ではないから

 

”バレエでの膝の伸ばし方ではない” というのが、ポイントである。

つまり、普段の生活で、無意識にしている膝の伸ばし方ではないことを、意味する。

 

 

バレリーナの “しなる脚” を目指す前に、理解すべきことがある。

▶︎一日二日、数ヶ月程度で形成されるものではない。

▶︎適切な指導によるレッスンと、適切な指導によるフロア等のトレーニングによって作られたものである。

▶︎適切な “理解” によって、得られたものである。

 

適切な指導、適切な解釈だったとしても、一日二日で作られるものではない。

すぐ結果が出ないと辞めてしまうようなタイプや、納得しないとやらないようなタイプは、はっきり言って向いてない。

 

もう1つ。

指導内容や指導が適切であったとしても、本人の理解や解釈が違ってしまうと、全てを正確に理解することはできない。

どんな指導であっても、である。

理解や解釈が違っている場合、本人が「理解できた、分かりやすい」と思っていても、それ自体が間違っているのである。

りんごはりんごであり、みかんではない。

当たり前と思えることが、どれだけ困難なものか。

ここは、教師が「強制」することはできないのである。

 

 

 

本論2:”伸ばす”と”押し込む”

整理をしてみよう。

教師に「膝を押し込まないで!」と言われる場合、どんな状況が考えられるだろう。

まさに「過伸展」(hyper extension)になっていることと思う。

ここでは、難しく考えずに、どの方向に膝のテンションをかけているかで、捉えてみたい。

 

 

(図1)

膝を水平方向に “押している”。

これが過伸展の状態である。

 

(図2)

フトモモを引き上げることで、膝を “伸ばしている”。

これが、バレエでの “膝を伸ばす” である。

 

 

 

本論3:大人の伸ばし方

こうして図としてみると、(図2)の膝の伸ばし方が、「当たり前」のように思えるであろう。

しかし、実際には逆である。

バレエに限らず、ほとんどの人間は(図1)で膝を伸ばすことを、無意識に行っている。(注1)

 

こちらで詳しく述べている。
ぜひ一度、お読みいただきたい。

膝のロックと伸ばす

 

まずは、これを知っておくだけでも、理解が違ってくる。

 

以前にも言ったが、ヒトは、膝を伸ばすときに「膝に体重をかけることで実現しようとする」。

筋を使って膝を伸ばすという、解剖学の教科書に書かれていることは、実際には、ほとんど行っていない。

 

つまり、過伸展・膝の押し込みの原因は、普段から無意識にしている「膝に体重をかけて伸ばす」を、そのままバレエでやったから、である。

アンディオールしたから、無理して開いているから、ポジションをとっているから。

これは「問題のすり替え」であって、ファクトではない。

決して、バレエポジションやアンディオールをしたことへの「代償」ではない。

 

 

 

本論4:バレリーナの伸ばし方

では、バレリーナは、どのように膝を伸ばしているのだろうかというと、(図2)の伸ばし方である。

もう一度、みてみよう。

 

(図2)

フトモモを引き上げ、膝を伸ばしている。

すると、フトモモが “活動によって発達する 。

これは、寄りかかり筋とは、全く異なる。

 

フトモモを活動させるというだけで「脚が太くなる」と、思う人もいるかもしれない。

しかし、同じ収縮するといっても、遠心性収縮である。

求心性ではない。(注2)

 

さらに、バレリーナは、下腿前面をよく使う。

ふくらはぎとは異なり、骨が目立ち、一見、筋がついていないように感じるかもしれない。

がしかし、ここには「アンディオール筋」ともいうべき、バレエで最も重要な筋が勢揃いしているのである。

まさに「夢の共演」と言っても、過言ではない。

 

フトモモの適切な発達、下腿前面の適切な発達により、脚のアウトフレームがデザインされていく。

これが、バレリーナのしなる脚である。

 

 

結論:今、出来ること

膝の押し込みではなく、バレリーナのしなる脚を手に入れるために、今、できること。

▶︎フトモモの引き上げ

▶︎膝を上げる

▶︎脛を寄せる

 

バレリーナのしなる脚は、自分で作っていくもので、それが最も望ましい。
(生まれつきのエックス脚よりも)

膝の押し込みとは違うことを、はっきりと認識し、バレエでの「膝を伸ばす」を習得しよう。

 

 

注1:無意識での膝の伸ばし方について、書かれています。

注2:収縮の形態については、こちらのテキストで述べられています。(第三章 1.筋の使い方)
大人バレエなぜ上達しない 電子書籍『大人のバレエ なぜ上達しない』

 

 

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