バレエの教養があるか。
方向には、
的確に表れてしまうものである。
本ページに記載の(図)に関しては、大雑把にイメージするものとして書いてある。
厳密な詳細については、専門のイラストなどをご覧いただきたい。
ここではあくまで、大まかなイメージ図として掲載していることをご了承いただく。
序論:2つの捉え方がある
もっと前へ! 横に出して! 後ろですよ!
前・横・後ろは、方向を示すポピュラーな言い方である。
日常でも頻繁に使われる。
バレエでは、2つの捉え方を認識しておくと、指導者が何を伝えたいのかが見えてくるだろう。
ここで言う方向とは、”ディレクション”を指す。
エポールマンではない事を、予め、お伝えしておく。
本稿では、バレエにおける方向の捉え方について述べる事とする。
本論:方向 2つの捉え方|バレエレッスンを理解するヒント
本論1:空間に対しての方向
空間に対しての方向を指示している場合を整理しよう。
バレエレッスンでは、鏡を正面としてお稽古している事がほとんどだと思う。
空間に対しての正面は鏡、つまり「1」の方向となる。
それぞれをまとめると次のようになる。
▶︎前…1の方向
▶︎横…3または7の方向
▶︎後ろ…5の方向
例え、あなたが横向き(3や7の方向)を向いていたとしても、空間に対しての前であれば、それは「1」となる。
3の方向を向いている時に脚を前に出していたとしよう。
「もう少し前に出して!」と教師が指示をした時、それが「空間に対しての方向」を示すのであれば、もう少し、正面寄りにして欲しいという事になる。
もっと、身近な話をしよう。
後ろ向きに立っているとする。
つまり、5の方向を向いている。
この時「前を向いて!」と言われたら、大抵は「1」つまり正面を向くだろう。
これは、空間に対しての方向をとっているという事である。
本論2:体に対しての方向
体に対しての方向は、少し違った見方が必要となる。
体に対しての方向とは、体を基準にして方向を取ることである。
体が正面を向いているのであれば、それぞれの方向は、空間でとる場合と同様だ。
体の向きを変えてみよう。
右足前第5ポジション、クロワゼに立つ。
つまり、体は「8」の方向を向いている。
そのまま、右足を前に出してみよう。
この「前」をどう解釈するのか。
▶︎空間に対してならば、「1」となるが
▶︎体に対してならば、「8」となる。
体に対しての前とは、このようになるからである。
今は、斜めを向いているのだから、この図の方向を変えてみるといい。
では、同じ前でも、体の向きが変わったらどうなるだろう。
右足前第5ポジション、エファッセに立つ。
つまり、体は「2」の方向を向いている。
そのまま、右足を前に出してみよう。
この場合の前は「2」の方向となる。
体を基準にする場合、体の向きに対しての方向となる。
従って、体の向き自体を正確に取れていないと、体を基準にした腕や足などの方向も、不正確なものとなる。
結論:専門用語を覚えるメリット
動作ではなく、アンサンブルの構図で考えてみよう。
図のように斜めのラインをとって、整列していたとしよう。
8から4に向けての斜めのライン状に整列し、体は「8」の方向を向いている。
教師が「もっと前に行って!」と指示をした時
▶︎空間基準であれば、全体を「1」の方向にずらす
→つまり、ラインを客席側に押し出す
▶︎体基準であれば、全体を「8」の方向にずらす
→つまり、現状より前に進む
という事になる。
最も、こうした場合に空間基準で指示するならば、もっと的確な言い方はある。
とは言え、それは専門用語になってしまう為、こうした言葉を覚えていない生徒に対しては、「前・横・後ろ」という言葉で指示を出さざるを得ない。
誰にでもわかる言葉というのは、解釈の幅が広いのが難点である。
専門用語は、的確に伝えることが出来るが、相手が知らなければ体をなさない。
方向は、どちらを基準にしているのかによって、対処が違ってくる。
2つの基準は、レッスンで都度、指示をするものではないので、どちらの事を示しているのか、瞬時の判断が必要だ。
こうした事は、バレエレッスンを理解するのに、非常に役立ってくれる。
まずは、どちらのことなのか、疑問を持つ事からはじめてみよう。
選択肢は2つしかない。
片方をやってみて違っていたら、もう片方を試してみれば良い。
そのくらいの”気軽さ”を持って、試すことが大切だ。