1本の線の上を歩くように…
この意味を間違えてはならない。
綱渡りではないのだ。
序論:捉え方だけで改善することもある
第5ポジションがオーバークロスになってしまう。
センターレッスンで、より目立つ事である。
最も、最初のうちはそれどころではないだろうし、自分でも気づかない事が多い。
オーバークロスが気になっている時点で、単純な”ポジションに入れよう”だけでなく、具体策や全体を鑑みて、先に進んだ考えができていると言える。
オーバークロスは、いわゆる”抜けた”状態ではあるが、捉え方をはっきりさせる事で、改善するケースも多い。
体が原因と決め付けずに、先に捉え方を整理してみよう。
それで改善するならば、余程早いし、適切と言える。
体が変わったとしても、捉え方が適切でなければ、バレエ自体の改善とはいかない。
体の機能等からアプローチするのは、”捉え方→方法” をやってみてからでも遅くはない。
本論:オーバークロスの原因と改善
本論1:オーバークロスが起こりやすい動き
センターレッスンで考えてみよう。
その方が分かりやすい。
バーレッスン、或いは、センターレッスンでのタンジュやエシャッペなどで発生する事があるだろう。
とは言え、圧倒的にオーバークロスが目立つものと言えば「アレグロ」である。
アッサンブレだけでなく、シャンジュマンやエシャッペソッテの様な ”両足→両足” の動きなどでも、よく見かける。
また、第5ポジションではないが、ジュッテを交互に繰り返す時など、第5ポジションでの着く位置が身についてない故に、発生する問題もある。
動きもわかっているし、それなりにやってはいるのに「何となくサマにならない、何となく変、何となく違う」という原因の1つである。
本論2:詳細に意識する
オーバークロスになる原因は?
「正しい第5ポジションを取る事」大方の人は、このように答えると思う。
あなたは、どうだろうか。
その通りだと思う。
それを前提に、もう少し詳細に捉えてみたい。
具体的な案があるのとないのでは、核心が変わる。
まず、つま先とかかとの位置。
元の(つまり、最初に作った)第5ポジションの位置で止める。
これ以上いくと、オーバークロスになる。
具体的に述べると、第5ポジション自体、メソッドやスタイルによって違いはあるが、オーソドックスには、後側のつま先の位置を越えて、前側のかかとの方が外側になる事はない。(注1)
いずれにせよ、アッサブレで第5ポジションに入れる時、シャンジュマンで第5ポジションに着地する時。
プレパラシオンでとった第5ポジションの、つま先とかかとの位置に戻す事を意識しよう。
後ろ足のつま先を越えて、前側になるかかとが外側にならない様、位置をはっきりと決めておく事が重要である。
本論3:1本ではなく”2本”
第5ポジションの着地ではないが、オーバークロスが関連する例を取り上げたい。
アレグロでのジュッテの連続である。
ジュッテ、ジュッテ、ジュッテソッテ…と繰り返す時、図の方な足の運びを目にする。
つま先が、1本の線の上を歩いているかの様な足の運びである。
これを、タンジュでやってみると分かりやすくなる。
恐らく、このようにはしていないだろう。
1本の線の上を歩いているかの様にジュッテの連続を行うと、上体が左右に振られ、不安定になる。
空中で上体を保つ事が困難となり、胴体を振る反動で動作を生み出してしまう。
正しい方法はこうである。
難しく考える必要はない。
プレパラシオンで第5ポジションをとったら、両端を基準に2本の線を引く。
毎回、この線上に足を着く。
1本の線ではなく、2本の線の上に、左右交互に着くのである。
結論:ちょっとした疑問を大切に
「何となく違う、もうちょっと何とかしたい」
こう思う事があったら、それは間違いなく大事にした方がいい。
言葉では伝えにくいが、決定的な何かを感じ取っている可能性が高いからだ。
こうした事は、教師がどんなに何とかしようと、もがき、工夫を凝らしたとしても、気づいていない場合、本人の中での優先度は下がってしまう。
結果、何度提案しても、変わらないという現象が起きる。
つまり、こういう事だ。
本稿でいう、足を着く位置を変えれば、”上体やつま先、足の角度なども変わる、ジュッテやアッサンブレの本質的要素も変わる”と教師が踏んでいて、あなたの気になる事、例えば、つま先の伸ばし方もよくなる、と考えていたとしよう。
あなたの気になっている事は、ここに含まれている。
とはいえ、あなた自身が”つま先の伸ばし方”を優先したいと、無意識に働いている時点で、教師からの助言は、”つま先の伸ばし方”よりも優先度が下がってしまう。
何か変だな、もうちょっと何とかならないかな
漠然としていたとしても、気になっている事であれば、教師の助言とあなたの気になる事がリンクしてくる。
教師の仕事が本格化するのは、実は、ここからである。
何か違う、と感じ取れるということは、それだけ、自分以外(教師を含めて)の動きを見て、自分なりに分析出来たということである。
それ自体が、褒められる事なのである。
だからこそ、大切にして欲しい。
”何か違うな”を。
注1:前側のかかとが、後側のつま先を越えるスタイルも存在するが、一般的には、目一杯クロスしてつま先とかかとが揃うところまでである。