バレエとして
成立させたいのであれば、
バレエとの”お約束”がある。
序論:現場で抱える問題がある
グランバットマン・アラセゴンでは、間違いを発生しやすい。
もしかしたら、教えられていない可能性もある。
察するに、現場の指導現場では、それどころではないのかも知れない。
フレックスに近い足先で上げる、明らかに膝が曲がっている、上体が崩れる…
こうした場合、これから述べる事よりも、こちらを優先せざるを得ないのだろう。
現状を考えると、教師を責めるのはナンセンスである。
常に、優先順位が存在し、悩んだ上での選択をせざるを得ないのだから。
とは言え、”形式”とは、形だけのルールとしてあるのではない。
非常に合理的で、適切に行うことでリスクを軽減できるからこそ、成り立っている。
付け加えて、形式が抜ける事があれば、もはやバレエではなく、エクササイズ運動と化してしまう。
今、時期でないのであれば、近い将来、取り組むであろう事として、知っておいて欲しい。
もちろん、時期であれば、実践すべきである。
本稿は、グランバットマン・アラセゴンでの形式を通して、成人女性特有の計算すべき項目について述べる。
本論:グランバットマンの位置|成人女性が計算すべきこと
本論1:アラセゴンの位置
腕をアラセゴン(第2ポジション)、グランバットマン・アラセゴンをする。
答えを先に言おう。
この時、脚は腕の後に上げなければならない。
腕の前ではない。
うちのお教室では、腕の位置がどうだとか、足を出す位置がどうだとか、そうした事にここでは言及しない。
注意点を述べておこう。
▶︎脚を腕の後ろに上げるからといって、その時だけ、腕を前にする事ではない。
▶︎体が硬い(可動域が足りない)事で、脚が腕の後ろに上がらないのではない。
▶︎今現在、腕の高さまで上がっていなかったとしても、”上げる事が出来た場合”を想定した練習が大切。
何かをよくしようとする時、”未来”を見据えている事が必要である。
過去の経験は、体が持っている。
良くも悪くも。
頭の中は、”未来”を据える事で、体をその方向性へと導く。
本論2:全てはここに集約される
グランバットマン・アラセゴンで、脚が腕の後ろに出せない理由は、可動域ではない。
姿勢にある。
ここから先に述べる事は、”時期”を待つ必要はない。
なぜなら、大人の場合、初心者の段階で習っておきたい事だからである。
胸郭、胸骨のポジションは、正しく取れているだろうか。
よく見かけるのは、脚を上げようとすると、
▶︎胸が落ちる
▶︎肋が開く
▶︎上体が前に倒れる
といった、いずれも、上体が前に被ってしまう事で起きる間違いである。
こうすると、脚は腕の前に出てしまう。
原因は、1つではない。
その上で、こうした事に、成人女性特有の項目が関与している事を知らないと、不具合が生じる。
子供や男性と違って、成人女性が計算して姿勢を取らねばならない事。
それは、バストの重さを考慮する事である。
子供や男性ダンサーと同じ ”構え”、姿勢は、成人女性にとっては間違いであり、テクニック習得の障害となる。
ここを計算しないと、上記のような間違いが発生してしまう。
常々言っているが、胸骨は床に対して垂直ではない。
やや後方に倒れていなければ、バレエの立ち方として正しくない。
また、肋骨間が十分に”張っていない” 事も、足の位置が取れない事に関与している。
胸郭・胸骨が位置を取れていても、肋骨間が緩み、不安定な状態では、上体が変形し、崩れてしまう為、見た目によくないだけでなく、体が下がり、上体が前に被りやすくなってしまう。
大きく息を吸って、胸郭を広げてみよう。
風船のように、空気を詰め込むのである。
そのまま、胸骨をやや後方に倒す。
基本的なこととして、身につけておこう。
結論:知ることが必要
成人女性が、子供や男性と異なり、考慮すべき点について述べた。
成人女性は、上体が前に被りやすい事は知っておこう。
もしかしたら、この”事実”を知らなかっただけで、やってみたら変わる可能性は大いにある。
また、グランバットマンに限らず、肋が開きやすい、支持脚が引けやすい、骨盤が前傾しやすい、という悩みを抱えている場合、早急に、該当する部位に落第点をつける必要はない。
こうした事は、本稿で述べた事と大きく関連している。
元々の体の特性を理解した上で、正しい事を実行し、足りない分を補充すれば良い。
特に、教師や職業ダンサーのように、幼少期からの訓練を受けていない場合、こうした特性を知っておく事は、大きなメリットとなる。
こうした特性を理解し、”計算”する事で、実際の動きでの可動域が増し、そして、強くなっていく。
また、バレエとしての正しい形式を身につける事が可能となる。
レッスンへの道のり、確認してみてはいかがだろうか。