適材適所。
然るべき仕事をしてもらうことが
最良である。
序論:厄介な理由
癖をとるのは、時間がかかる。
新しい事を覚えるより、癖を取る方が大変だ。
あなたも耳にした事があるだろう。
そもそも、”癖” というのは、何故これほどまでの厄介なのだろう。
それは、”無意識に望まない動きをしているから“ である。
無意識にしている事を、意識するのは難しい。
無意識にしている事だからこそ、対応するのが難しい。
癖とは、やろうと思ってやっているのではない。
だからこそ、”癖” なのだ。
本稿では、個別の対応ではなく、癖という全体像について述べる。
本論:癖とは何なのか|癖をとる為の改善法
本論1:癖のメカニズム
必ず、知っておいて欲しい事がある。
どこかの機能が低下していたり、足りない事が原因で起きている “代償運動としての癖” というものがある。
この場合、癖をとる前に、原因となっている機能を回復させる、強くするといった事を先にする必要がある。
先に癖を取ろうとしてしまうと、動作や姿勢が成立しなくなる。
さらに、大きな怪我や事故を招くケースも珍しくない。
この場合、代償運動によって、動作や姿勢を成立させていたという事を、軽んじてはならない。
メカニズムの例をあげて説明しよう。
例えば、ルティレをする時に「A・B・C」という筋が主体となり、動作を生み出しているとしよう。
方程式は次のようになる。
▶︎ルティレ=A・B・C
ここに、「Z」とか「I」という、本来、他の仕事を担うはずの筋が参戦してしまっているとする。
この「Z」や「I」が加わってしまう事で、ルティレで望まれない動きが出現してしまう。
例えば、お尻が持ち上がってしまうとか、首に過剰に力が入ってしまうとか、カマアシになるとかである。
あなたが普段、先生に指摘されるような事を思い浮かべれば良い。
この時点では、方程式は次のようになる。
▶︎ルティレ=A・B・C + Z・I
この時点では、まだ「+」で繋がれているだけである事に注目。
常習化すると、方程式が変わる。
▶︎ルティレ=A・B・C ・ Z・I
「+」で接続されていただけのものが、いつの間にか、ルティレをする時は「A・B・C ・Z・I」という筋を活動させて動く事が正しいのです、と刷り込まれ、覚えてしまう。
こうすると、癖が完成するのである。
いうなれば、ルティレをするならば「ルティレ」で良いはずなのに、
・ルティレをする時は、お尻を持ち上げるのが正しい
・ルティレをする時は、カマアシにするのが正しい
と刷り込まれている状態だ。
本論2:癖をとる
癖をとるという事は、方程式で言うと
▶︎ルティレ=A・B・C ・ Z・I
から「 Z・I」を本来の仕事場に戻す、という作業である。
とはいえ、単純に 「Z・I」を取ろうとすると、本論1冒頭で述べたような事が懸念される。
しかも、「Z・I」だけを取るというのは、意識的に出来ることでもない。
癖たる所以なのだから。
まず、「A・B・C」という、ルティレを生み出す仕事を担った筋が、その役割を果たせるだけのエネルギーを持っていなければならない。
▶︎エネルギー=強さ・パワー
これがあって「Z・I」は、はじめて、自分の職場へと戻る事が出来るのである。
これが、癖をとるという作業だ。
では、実際にはどうやって癖をとるのか。
理論上は、これまで述べてきた通りだが、頭で分かれば出来るような類のものではない。
これは、子供と大人では、対応が大きく異なる。
この記事は、大人を対象にしているので、子供についての対応は述べない。
大人の場合は、まず、理屈を知ってもらう事が重要となる。
重要性の認識を理解までいかなくても、知ってもらう。
これを飛ばすと、これまでと異なるアプローチにアレルギーを起こしやすくなる。
▶︎アレルギー=拒絶反応
「ルティレ=A・B・C ・ Z・I」が正しいと記憶しているのに、突然 「ルティレ=A・B・C 」です、と伝えたところで、受け入れる事が出来ない。
同意できる材料が必要になる。
知るという事は、あくまで「知る」であって、それだけで癖が取れるわけではない。
とはいえ、アレルギーを抑える為には、大切な工程である。
では、いよいよ癖をとるという作業を始める。
何をしたらいいのか。
それは、「ルティレという動作では、あなたが参加しなくても大丈夫ですよ」と、”Z ”と”I”に教える事である。
それには、「ルティレ=A・B・C 」がきちんと仕事をしなければならないところまで、「 Z・I」を追い込まねばならない。
「 Z・I」がお役御免になって、初めて、「ルティレ=A・B・C 」が仕事をし出す。
これで、正しいルティレの道が開けるのである。
結論:注意点
癖をとるには、正しく行う事。
そんな話も耳にするが、実際、それで上手くいくなら誰も苦労はしない。
癖をとるには、量より質。
これは、追い込みたくない場合の言い訳だ。
反論もあるだろうが、反論したいという時点で「自分に心当たりがあるから反論する」のである。
さて、追い込み方について、大人の場合は注意点があるので、お伝えしておく。
大人の場合、重さによる影響が強い為、立位で癖とりを行う事はリスキーである。
大部分は、重さの影響が少ないフロアで行う事が必須となる。
この場合、重要なのは「指導力」ではない。
必要なのは、質の良いワーク、エクササイズ内容。
量をこなすこと。
指導は極力控え、対象者が苦しくても続けるよう手助けすることが重要である。
指導してしまうと、伝える側と受け取る側、それぞれで主観が入ってしまう。
癖をとるのであれば、指導は入れない方が望ましい。
また、正しく行う事が目的のワークやエクササイズは、癖をとるには向いていない。
ひたすら動くだけで良い、計算されたワーク・エクササイズが、最も望ましい。
大人には、強制する事ができない。
本人の選択に委ねるしかない。
あなたが、やってみよう!と思うのであれば、
私は応援したい。