ポジションチェンジを侮るなかれ。次のポジションの前に、成功か否かは、決定しているのだから。
序論:バレエの作法
オーソドックスなバレエのレッスンは、バーレッスンから始まる。
バレエには、いわば 作法 のようなものが存在する。
レッスンでも、舞台に出ている と仮定できる状況においては、踊り終えて走り去る時も、バレエとしての所作でならなければならない。
センターレッスンでのアンシェヌマン。
踊り終えた途端、ドタドタと歩き出してはならない。
ポジションチェンジも同様である。
ステップとして、名称がついている訳ではない。
だからこそ、入門者と上級者の差が大きい。
こうしたことができているか否かで、どの程度踊れるのかは安易に想像がつく。
本稿では、ポジションの変え方について述べる。
本論:バーレッスン|ポジションチェンジの方法
本論1:4つのポジション
バーレッスン最初に行う プリエのアンシェヌマン では、4つのポジションが登場する。
場合によっては、若干、順序が変わることもあるが、1番・2番・4番・5番 である。
特に、大人のバレエの場合、ポジションから次のポジションへの 移行 が、曖昧になっているケースをよく見かける。
当然ではあるが、曖昧な移行によって とられたポジションは、それもまた、曖昧になる。
つまり、結果として、不正確なポジションをとってしまう。
ここで、しっかりと手順と注意点を整理しておこう。
本論2:ポジション移行の手順
■ 1番 → 2番ポジションへの移行。
・バー外側の脚を横へタンジュする。
・かかとを床に下ろして、2番ポジションへ。
■ 2番 → 4番ポジションへの移行。
・バー外側のかかとを床から剥がし、横のタンジュになる。
・デミロンデジャンブ アンデダーン で、前のタンジュまで脚を移動させる。
・かかとを下ろして、4番ポジションへ。
■ 4番 → 5番ポジションへの移行。
・前側の足のかかとを床から剥がし、前のタンジュになる。
・支持足側に動作足を引き込み、5番ポジションへ。
▶︎動きを1つずつ区切り、何をしているのか、はっきり分かるように行う。
本論3:移行時の注意点
■ 1番 → 2番ポジションへの移行での注意点。
ほとんどの場合、体重移動→かかとを下ろす をしている。
これは手順が逆で、横に出したタンジュのかかとを下げ始めることで、体重が移動する。
×体重移動 → かかとを下げる
○かかとを下げる → 体重移動
この時に確認したい、骨盤水平・平らの意味について述べた記事を貼っておく。
この際に、足の踏み換えについて問題になることがあるが、
・2番ポジションの歩幅
・目的や状況
などによっても変わる為、可否については、ここでは言及しない。
ただし、踏み換える場合でも、2歩以内に収めなければならない。
■ 2番 → 4番ポジションへの移行での注意点。
かかとを下げると同時に、動作側の腰骨も下がってしまう。
骨盤の高さを揃えようとして、逆に、動作側腰骨が下がりすぎてしまうことは、大人バレエでは、よくある事だ。
デミロンデジャンブで前のタンジュの形になったら、その時の 動作側の腰骨の高さを保ったまま、かかとだけを床に下ろしていく。
これが、脚を長く使う ということでもある。
■ 4番 → 5番ポジションへの移行での注意点。
足を5番ポジションに収めようとすると、付け根が後方に引いてしまう。
当然、お尻が出てしまったり、下腹の緊張が抜けたり、上体が前にかぶる。
動作脚を支持脚に引き込む際、支持脚の腿を前方に押し出そう。
動作脚の引き込みと、支持脚の押し出しを同時に行う。
つまり、支持脚が動作脚を 迎えに行く というワケである。
結論:あなたの癖が表れる
不正確なポジションチェンジは、荷重位置や重心、パーツの位置の不正確を表す。
また、バレエステップよりも、あなたが持っている本質的な癖が現れ易い。
▶︎体重の移動や重さをかけることで動作を生み出す癖
▶︎腰骨を下げてしまう癖
▶︎付け根を引いてしまう癖
ポジションチェンジは、毎回、同じことの繰り返しである事から、こうした癖の改善に最適である。
さらに、適切な方法で行う事で、背骨のアライメントを整えることも可能である。(注1)
ポイントを押さえて、ぜひ活用頂きたい。
注1:背骨のアライメントを取る → 実際のバレエレッスンで行う為のヒント