言葉と行動がウラハラ。
あなたの体も、
例外ではない。
序論:教師の意図が伝わりにくい
背中が丸まっている人に「背を高くして!」と言ったら、どうするだろう。
ほとんどの人は、天井方向にぐっと体を引き伸ばすであろう。
つまり、尺を長くする。
頭の高さをかえず、腹を突き出し、膝を曲げ、反り返る。
そうすることで、背を高くしようとする人は、まずいない。
ところが、特定の部位に対し「伸ばして!」と指示が出ると、このような現象が起きることが多い。
レッスンで教師が意図する「伸ばす」が伝わらないことがある。
伸ばすという概念が異なるからだ。
伸ばすとは、どのようなことなのか。
教師は何を求めているのか。
本稿では、これらについて述べる。
本論:伸ばすという言葉に教師は何を求めているのか
本論1:曲げる・伸ばす
例えば、膝を曲げる・肘を曲げる。
解剖用語では「屈曲」というが、特に覚える必要はない。
文字に「曲げる」が含まれているので、見ればわかるだろう。
では、「伸ばす」はどういう事なのか。
図を逆再生すれば良い。
「伸ばす」になる。
なんだ、当たり前じゃないか。
そう思うかもしれない。
そうではないのだ、ほとんどは。
本論2:ありがちな「伸ばす」
「膝を伸ばす・肘を伸ばす」というように、ある特定の部位を伸ばそうとする時、異なる行為をしてしまう事が多い。
図で見るとわかると思うが、これは、「伸ばす」ではなく「逆方向に曲げる」である。
逆方向に曲げる事で、伸ばすをしようとしてしまっている。
代表的な例が、膝と肘である。
特に、膝は自覚が持ちにくい為に、教師の根気強い指導が求められる。
膝を伸ばしなさい、と教師に言われる。
↓
「伸ばす=逆方向に曲げる」をしてしまう。
↓
教師視点では「伸ばした」と判定できない為、再び「膝を伸ばす」事を提案する。
↓
「伸ばす=逆方向に曲げる」をしてしまう。
教師が何を求めているのかを、知識として把握しておかないと、こうした悪循環ループに陥りやすい。
そして、この逆方向に曲げた状態を過伸展という。
伸展とは、字の如く「伸ばす」という意味だが、「過」という一文字が加わると、伸ばしすぎというよりは、逆方向に曲げているといったニュアンスが強くなる。
本論3:「伸ばす」の解釈
「伸ばす」=尺を長く取る
このように捉えると分かりやすい。
逆方向に曲げるという行為は、尺が短くなるが多い。
仮に、変わらなかったとしても、あなたにとって最も長い状態ではないのは確かである。
伸ばすという事は、あなたにとっての最大の長さを取る事である。
この理解が非常に重要である。
結論:バレエは「長く」
伸ばすという事は、背を高くする原理と同じである。
考えが混乱した時、体が迷った時は、これを思い出してほしい。
まして、バレエは体を長く、筋を長く使う。
縮こまった体、縮こまった筋の使い方は、バレエの美的概念に該当しない。
欲しいのは、長く伸びやかな体のラインである。
自分の中では、当たり前だと思っていた事を確認すると、思わぬ発見をするであろう。
そして、そうした事は大抵、バレエの前提となっていて、前提を押さえないからこそ、バレエにならない原因を生み出している。
あなたが電車の中なら、自宅のソファに座っているのならば、会社の休憩中ならば、手指を伸ばす事で試してみて欲しい。
手指ならば、こっそりとできる。
もうお分かりのはずだ。
手指を伸ばすとは、反り返らせる事ではないことに。
今、あなたは、バレエ教師が伝えたい事に気づいたはずである。