体で表現するとは、どういうことだろう。
陥りがちなワナを先に伝えるなら「精神論・感情論」に走ってしまうということだ。
作品を踊る場合は、そうしたこともある “かも” しれない。
レッスンではどうだろう?
レッスンで大切なことは「表現できるだけの技術を習得すること」にある。
かつて、私が師事した教師は、レッスンでこんなことを語り出した。
「脚は、上がるなら上がるに越したことはありません。90度しか上がらないよりも、120度上がるなら上がったほうがいい。回転も同じです。2回転しかできないよりも、3回転できたほうがいい」
話はここで終わらない。
「できることが増えるということは、選択肢も増えるということです。90度しか上がらないよりも、2回転しか回れないよりも、表現の幅が広がります。それそのものの量に価値があるわけではありません」
さまざまな考え方があるだろうが、個人的には大方、同意している。
最終目的が、量ではない。
その先にある。
「えー、でも量が出せない場合はどうするの?」
あなたはそう思うかもしれない。
もちろん、量が出せるに越したことはないが “術” はある。
45度までの脚の出し方だけでも、印象はグッと変わるものだ。
その入り口をほんの少し、ご紹介しよう。
手元に置いておきたい脚の出し方
まずは、2種類!
形式を要求しない場合、45度までなら、誰でも脚を出すことはできるだろう。
よほどの事情がない限り。
つま先を伸ばして、アンディオールして、とバレエ的脚の出し方を気にしていたとしよう。
それでも、レッスンで45度も上げることができないケースは、まずない。
もし、不可能ならば、バレエクラスの前に医師の診察が必要だ。
そう、あなたも大丈夫なはず。
では、この条件で整理してみよう!
45度までに脚を出す。
バーレッスンでは “プリエが終わってから、ロンドゥジャンブアテールが始まるまでの間” に練習する。
最初は、脚の出し方を2つにわけてみよう。
脚の出し方①:すばやく出し、すばやく止める。
脚の出し方②:一定の速度で、出す・戻す。
大人が先に練習するとよいのは①。
お教室の方針によって②しかやっていないのであれば、レッスン前後に少しでもチェックすることをオススメしよう!
①の出し方は、瞬発力を養う。
動きそのもののスピードや、脚の強さを身につけることが可能な方法である。
年齢とともに瞬発力は失われていくので、老化対策としても有効だ。
ここでのイメージは、いわば、車の「急発進・急ブレーキ」。
ギリギリまで待って唐突に脚を出す、急ブレーキで唐突に止まる。
戻るときも同様だ。
一方で②は、速度コントロールと足部コントロールの練習になる。
①に比べると、車の運転は穏やかだ。
一定の速度で車が走っている光景を思い浮かべてみよう。
急発進・急ブレーキよりも、燃料のロスも少ない。
ということは、体力の消耗や筋疲労対策にもなる。
”流れに乗る” 車の流れに乗る、音楽の流れに乗る。
パワーよりもコントロール。
そうしたことを求める場合には、効果的な脚の出し方だ。
表現とはこういうこと
アッサンブレやジュッテといった、アレグロに登場するステップを例に整理してみよう。
同じステップなのに、脚の出し方によって受ける印象が変わる。
その前にアッサンブレとジュッテのルールを復習しておこう!
[バレエのルールブック]
①アッサンブレは、両足着地
②ジュッテは、片足がクペ。
(出した足がプリエ、反対の足がクペ)
まず、脚の出し方その①で、”アッサンブレ” もしくは “ジュッテ” をしてみよう。
動きの「輪郭」がはっきりとするために、力強いラインを描くことができる。
・動きがボヤッとして見える
・意思がある動きに見えない(本人に意思があっても)
・ハッキリ動いて!と言われることが多い
こうした場合、①がオススメだ。
また、音楽自体が力強い場合も、こちらの方が動きと音楽がマッチする。
では、脚の出し方②で試してみよう。
この出し方で動いてみると、①とは対照的で
・柔らかい動き
・こなれた印象
・軽やか
このような印象を受ける。
①が直線的な動きであるのに対して、②は「丸みのある動き」になる。
いわゆる「一生懸命踊ってます!」ではなく、軽々と、楽々と動いている、そんな感じだ。
情緒性を出す場合は、こちらをオススメする。
①でバタバタして見えてしまう場合でも、②に切り替えると動きに落ち着きが生まれる。
同じステップでも、これだけ対象的な印象を出すことができる。
こうした「目的」を知った上でレッスンをすると、選択の幅が広がるためにレッスン自体が、非常にオモシロイものとなる!
きっと、あなたなら「正しい」が最終目的ではないことに気づくことだろう。
とても大事なこと
アッサンブレとジュッテを例に、体で表現することについて整理してきた。
2つの脚の出し方についてお話ししたが、最も大事なことをここでまとめておこう。
・アレグロ自体が苦手
・動きが遅れがち
こうした場合のほとんどは「脚が出ていない、もしくは、遅い」。
もちろん、あなたが一生懸命やっているのは理解できる。
その上で、脚が出なければ、動きはドンドン遅れてしまう。
その場合は、迷わず「脚の出し方①」を選択しよう。
急発進する動きが、非常に重要となる。
これさえできれば、あなたのアレグロに対する印象が変わるかもしれない。
では「脚の出し方②」は、どんなケースに適しているかというと、バレエ形式がすでに身についている場合。
「脚の出し方①」ができた場合、もう1つの選択肢となる。
これが、表現の幅だ。
さまざまな脚の出し方を研究しよう!
●3種類の脚の出し方、バレエはもっとオモシロイ!
▶︎https://juncotomono.info/program/20210721-19-jete-degage/
頭の中で
2種類のアッサンブレを
イメージしよう!