強制できないからこそ
その人の”素養”が見て取れる。
序論:”強制” が出来ない
バーレッスンで、
・先生が順番を説明している時
・解説をしている時
或いは、センターレッスンで
・他のグループが踊っていて、自分の番を待っている時
あなたは、どのように過ごしているだろうか。
こうした時に発生する問題は、大人特有と言っても良い。
特に大人向けのクラスでは、”強制” する事が出来ない。
故に、提案は出来ても、そこから先は、本人がどうするかにかかっている事が、とても多い。
とは言え、今から述べることを押さえられるか否かは、技術やボディデザインに、大きな影響を及ぼす。
現実から逃げず、受け入れる事でのメリットは非常に大きい。
本稿では、レッスン中の過ごし方について述べる。
本論:レッスン中の過ごし方が、明暗を分ける
本論1:大人クラスになく、子供クラスにあること
子供達のバレエクラスにおいて、きちんとした指導者ならば、礼儀作法として、半ば強制的にでも”仕込む”事がある。
”強制的にでも”というのが、最重要ポイントだ。
疲れていようと、機嫌が悪かろうと「レッスンに来たからには、しっかりやりなさい」という事が、本稿で述べる内容である。
これが、どれほどまでに大事なのか、この時点で、生徒が知る由もないだろう。
バレエとは、過酷なもので、どんなに疲れていようと、踊っている間は美しくある事を求められる。
「疲れたので、背中を丸めて、お腹を突き出して、休憩します」なんて、オーロラ姫がやったものならば、興醒めするだろう。
普段から、疲れていても出来るように”仕込む”事で、無意識でも美しく立つことを、体に覚えさせていく。
こうしていくうちに、習慣となり、必要な筋力が、知らず知らずの間についていくのである。
筋力とは、バレエレッスンやトレーニングだけで、つけるものではないのである!
本論2:一度下げると、クラス中には戻らない
”仕込み”とは何なのかについて述べるが、その前に整理したおきたい事がある。
レッスン中の休憩と、いわゆる休憩の違いである。
センターレッスンが分かり易いだろう。
他のグループが踊っていて、自分が待っている間、体力を少しでも回復させる為に休憩を取るのは良い。
しかし、一般的な休憩のように、リラックスしてはならない。
あくまで、レッスン中である事を忘れるべきではない。
そうしなければ、緊張の糸が切れ、出来るはずの事が出来ない事態に陥ったり、ケガや事故が起こりやすくなる。
一定の緊張感を保たねばならない。
それを前提として、話を進めよう。
バレエは、常に体を高く保ち続ける。
原則として、レッスンの進行と共に、体が落ちるような事があってはならない。
車で考えてみよう。
ちょっと止まるたびに、エンジンを切っていたら、どうなるだろうか。
必要以上にエネルギーを消費する。
一定にエンジンがかかっていれば効率が良いものを、切ったり入れたりを繰り返す行為は、相当なロスを発生させる。
これは、大人バレエクラスで、頻繁に起きている事である。
動く事で引き上げた体を、待っている間に下げてしまう。
自分の番が始まると、再びエンジンをかけ直し、引き上げようとする。
さらに、問題なのは、私達の体は機械ではないという点である。
エンジンをかけ直した時、私達の体は、元の高さには戻らない。
すでに、消費した分を差し引かれてしまう。
それが “疲労” である。
つまり、エンジンを切る回数が多い程、体は下がっていってしまう事を知って欲しい。
勿体ない話ではないだろうか。
一所懸命、引き上げていても、思わぬところで逆転現象が起きてしまう。
ならば、意識を持って行動しようじゃないか。
本論3:電源は切らないこと
レッスン中での休憩、待ち時間の概念を更新しよう。
レッスン中の待ち時間、休憩=動く事で上がった・作った体を、保つ時間。
電気ポットでいうと
・自分の番に動く→お湯を沸かす
・レッスン中の休憩、待ち時間→保温
→電源オフではない。
実際のクラスレッスンで、気をつけたい事。
▶︎待っている間は、両足でまっすぐ立つ。
休め!の立ち方は、出来るだけ控える。
▶︎お腹を突き出す、背中を丸める、腕や脚を組むといった、”バレエ動作でしてはいけない事”は、待っている間もしない。
▶︎バーにつく時、センターで場所につく時、踊り終え はける時は、小走りですばやく移動する。
実際に、動く時は、筋を使って体を動かす。
待ち時間では、筋を休ませつつも、高さは保つ練習をする。
結論:日常の所作も変わる
レッスン中の過ごし方は、気をつけようと思えば、今すぐにでも出来る。
最初は辛く感じるかもしれないが、少しずつでも、保てるようにしたい。
技術的にも、体を作る上でも、待ち時間・休憩をどう過ごすかは、大きな影響を受けている。
気を付ける事で受け取るメリットは多いが、デメリットはない。
大人のクラスでは、言いにくい・自覚しにくい・軽視されやすい、そうした事ではある。
レッスンさえしていれば、上達するという考えを持つ人もいるだろう。
それぞれに考えはあるだろうが、特に、身体形成からすると、確実に影響が現れているのは事実である。
精神論ではないのだ。
身体形成の教師の中には、こうした事が全てだという先生もいる程である。
それほどまでに重要でありながら、重要性の認識が薄いのは、誠に残念な話である。
相手が、重要性の認識をしていないと、伝えにくい。
その代表的な例であるように思う。
教師側としては、言いにくい事でもある。
この記事を読んでいるあなたは、きっと、上達を目指している事と思う。
ならば、少しでも考えてみて欲しい。
レッスンを美しく過ごすならば、日常での姿勢や所作も変わる事だろう。
バレエから所作へ反映し、所作はバレエへと反映する。
素晴らしいサイクルだ。
そして、もう1つ。
自分の為になる。
それだけでなく、先生の目には、一所懸命で、マナーの良い、感じのいい生徒に映るはずである。
それは、信頼を獲得する事に、大きく関与するのである。