些細なことは、些細ではない。
そこを見れば
全てが集約されているのである。
序論:足部からの影響
タンジュで床を圧す。
足指(以下、足趾と表記)で圧すわけだが、具体的に、どの足趾の、どこで圧すのか。
ここをはっきりさせる事は、足部だけでなく、脚全体のライン形成に非常に役に立つ。
当然、足部機能にも良い影響をもたらす。
本稿では、バットマン・タンジュにおいての床の圧し方、その位置について述べる。
本論:タンジュでの床の圧し方|位置と解説
本論1:基準となる趾(ユビ)を知る
どこでも、気軽に確認できるよう、手指で整理してみると良い。
可能であれば、本稿を読みながら動かしてみると、イメージが付きやすいかと思う。
最初に知って欲しい事は、基準を親趾(オヤユビ・第1趾)にする事である。
バットマン・タンジュ・デヴァンでは、親趾以外の何かの趾を、床に押し付けてしまうケースが目立つ。
小趾(コユビ)を床に寝かせてしまうと、かかとが下がり、カマアシになりがちである。
バットマン・タンジュ・セゴンで多いのは、足の位置を必要以上に、前方に変えてしまう事で起こる弊害である。
アラセゴンでは、骨格や筋の発達状況などによって、足の位置を多少、調整する事もあるだろう。
その際、アラセゴン、つまり横とみなされる範囲を大幅に逸脱し、前方斜め45度に出す事が習慣化されてしまうと、小趾をベタっと床についてしまうようなタンジュをし易い。
何にせよ、特に小趾が床にダイレクトについてしまうのは、良くない。
筋に必要な仕事を与える事が出来ず、膝下がアンデダーンに入ってしまう。
加えて、カマアシや足首の怪我を誘発しやすい事も、覚えておきたい。
本論2:圧す位置によって、現れる形が異なる
親趾が基準だという事が分かったら、さらに、範囲を絞っていく。
まず、爪側を床に押し付けてしまうケースからみていこう。
あなたも手指で確認してみて欲しい。
バットマン・タンジュ・デリエールで、動作脚のアンディオールが不十分であると、角度を取る事が出来ず、膝が床方向を向いてしまう。
この状態では、爪側を床に押し付けてしまう。
また、デヴァンやアラセゴンで、この傾向が見受けられる場合は、明らかに、脚が割れてしまっている。
そして、膝が伸びていない。
脚が割れる=アンディオールを構成する要素が欠ける=アンディオールが出来ていない
この間違った方程式を忘れずにいよう。
もう1つのケースは、親趾の”腹”と呼ばれる部分を、床に押し付けているケースである。
手指で場所を確認してみよう。
この部分を床に押し付けた状態は、十分に甲が引き伸ばされたポイントにならず、甲のラインがでないばかりか、足を発達させる事が出来ない。
要は、足を伸ばし切れていないという事だ。
本論3:床を圧す位置
では、どこで床を圧すかというと、親趾の爪の手前である。
これは、トウシューズ(ポイント・ポアントシューズ)の立ち方も同様である。
トウシューズを履いてフルポイントに立った時、爪の方に乗り越えるように立ってしまうのを目にする事があるが、これは、正しくない。
バットマン・タンジュで、”どの趾の、どこで”床を圧すのかを理解し、トライしていたら、トウシューズの準備が出来る様、合理的にできている。
全ての方向で、この”爪の手前”で床を圧すが、デリエールに関しては、補足をしておきたい。
大人からバレエをはじめた場合、反復量が追いつかない為に、特に、デリエールにおいて、指定の脚の角度を取りきれない事が多く、カマアシになり易い。
その場合は、爪の外側を床に触れるように、調整しても良い。
(人差し趾側とは反対)
膝下のアンディオールには若干欠けるが、爪の手前をつける事によって、他の部位が崩れるよりかはいいし、何より、バレエとして間違いではない。
つまり、脚全体のアンディオールに欠けると言うわけではない。
床を圧せたとしても、角度と位置が取れないようであれば、形式からは外れる事となる。
結論:全体を計算する事と注意点
何度も繰り返すが、足で試す前に、手指を使ってイメージトレーニングをする事を、お勧めする。
どこで圧すか?だけでなく
▶︎指定の場所で床を圧す事で
▶︎足部、さらに、脚部全体が
▶︎どのようなライン、形になるのか
この3つを押さえながらやってみると、あなたの力になるだろう。
それを理解していないと、床を圧す位置が正しかったとしても、その恩恵を十分に受ける事が出来ない。
もう1つ、大事な注意点がある。
”床を圧す”のであって、”体重をかける・のせる”事ではない。(注1)
体感を頼る場合、ここを混同しやすい。
実際には、床は全く圧す事が出来ず、体重を欠けているだけであっても、誤認し易い。
特に、デリエールにおいて、爪の外側に調整する場合は、十分に留意する必要がある。
決して、趾を押し付けてはならない。
”押す”ではなく、”圧す”である事を、忘れないで欲しい。
手指を使って、頭の中を整理しよう。
理想を、しっかりと叩き込む。
この一手間が、おいしい料理にしてくれるのだ。
注1:床の圧し方については、こちらの記事をお読みください。