観客に思いやりを持った上で
バレエを学ぶなら
自ずと”正しいバレエ”が見つかるだろう。
序論:バレエの形式を満たすためのテクニック
”私の体の資質や条件、全ての能力はバレエ向きであり、大手のバレエ学校を経て、オペラ座やボリショイ劇場のトップに君臨するダンサーと大差ない”
あなたがもし、このように思うのであれば、本稿は読まなくて良いと思われる。
申し分ない体の条件、才能、精神面を持っているのならば、既存のメソッドに適応するのだろう。
そうでないのならば、バレエの形式を満たすための考え方や工夫が必要だ。
本稿で述べる内容は、筆者がどのコーチにも言われ続けて来たことである。
コーチ違えど、優秀な指導者ほど、譲れない項目なのだ。
本稿では、特にセンターレッスンでこそ意識したい脚・足の区別について述べる。
非常に実用性高く、センスとなって現れる。
よくお読みいただきたい。
本論:大人に奨める「7:3」の法則:バレエ形式を満たす為の捉え方
本論1:前提として、整理すべきこと
前提として、あなたに整理して欲しいことがある。
バレエは、”魅せる”ものであって、記録を競う類のものではないということだ。
▶︎どれだけ開けるのか
▶︎どれだけ伸ばせるのか
▶︎どれだけ甲が高いのか
等々、競っているのではない。
これらは、魅せる為の要素として存在するのである。
つまり、バレエというカテゴリにおいて、”美しいとされる概念=形式・様式” を実現するための “材料” であり、「人より開けるのならば、それで良し」という類のものではない。
”正しい” についても同様のことが言える。
バレエの最上級は ”美しい” であり、”正しい” とは、”美しい” を手に入れるための材料である。
”正しい” を最上級にしてはならない。
本論2:2本の脚・足、それぞれの役割
前提を踏まえた上で述べていく。
例題を出すので、あなたも一緒に考えてみよう。
クロワゼデヴァン(脚が前方のタンジュ)をとっているとしよう。
この時、”客席側=鏡”から、よく見える・目立つのは、どちらの脚(足)だろうか。
そう、より客席に近い、動作脚である。
エファッセデヴァンでは、どうだろう。
客席側に近く、より目立つのは支持脚(足)である。
支持足がカマアシ・内足になっていると、とても悪目立ちする理由である。
↓”支持脚のカマアシ” については、こちらの記事をお読みいただきたい。
クロワゼデリエールでは?
同じクロワゼでも、今度は支持脚が目立つ。
第3・第4アラベスク で多いのは、エヴァッセデヴァンと同じく “支持足のカマアシ・内足” だ。
最後に、エファッセデリエールを考えてみよう。
あなたの答えは??
そう、動作脚が非常に目立つ。
膝が下を向いた第1アラベスク は、客席から丸見えである。
支持足のアンディオールよりも、動作脚の角度の方が、相当に目立つことを忘れないようにしよう。
本論3:「7:3」の法則で「マイナス」を消す
バーレッスンとセンターレッスンは、目的が異なる。
本稿は、センターレッスンを対象としていることを、今一度、確認しておく。
バレエでは、必ず ”より目立つ方の脚・足” がある。
アンファスでさえも、である。
では、どのように捉え、実行したら良いのだろうか。
そこで登場するのが、「7:3」の法則である。
これは、身体条件に自信がない、バレエもどきでなく「バレエ」にしたい人ほど、必要とするテクニックである。
目立つ脚・足:目立ちにくい脚・足
普段、「5:5」にしているとしよう。
この状態だと多くは、目立つ方の脚・足が動作側の場合、アンディオールが不足し、膝が下を向いてしまったり、あるいは、外を向くべきが天井を向いてしまったりする。
支持側の場合は、カマアシ・内足が問題となる。
これを「7:3」に比率を変える。
比率を変えるだけで、どちらかを「0(ゼロ)」にする訳ではない。
こうしたことを言うと、必ずと言っていいほど反論が来る。
冒頭に述べたように、体の資質に申し分ないのであれば「5:5」で行えばいい。
とはいえ、恵まれた条件のダンサーはさらに「7:3」にすることで、美しいフォルムを作っている。
根拠ない「5:5」にこだわっている場合ではない。
体感と思い込みに支配されていると、こうした反論が出やすい。
それで満足ならば良いが、観客に対して、不誠実極まりない。
それが本当にベターなのか、冷静になる必要があるだろう。
結論:思いやりが導く”正しい”
目立つ脚・足を優先させ、バレエの形式に収めるということは、一種、”観客への思いやり” である。
舞台に立つにしても立たないにしても、バレエ自体は、舞台で踊ることを前提に構成されている。
”開ないから”、”これが正しいから” 、”自分の中では感覚がいいから” という理由で、形式を無視しているのであれば、バレエとは言わない。
観客への配慮にかけた、エゴスティックな行為になってしまう。
あなたは、そうではない。
だからこそ、本稿を届けるのだ。
こうしたことは、プロと言えど、”誰でも”教えてもらえることではない。
だが、バレエそのものに向き合ってくれると思うからこそ、こうしてお伝えするのである。
授業料も取らずに、惜しげもなく。
さあ、開かない・カマアシ・内足に悩んでいるならば、「7:3」を試してみよう。
これが、”正しいバレエ” である。
順番は守るべきだ。
正しいことをすることで、思いやりが生まれるのではない。
思いやりが、正しいバレエへと導くのである。