上達する、上手になる、成長する。
そもそも、どんなことを言っているのか。
上達する、上手になる、成長する。
大人のバレエの場合、今の自分より向上する という変化を求めるケースと、変化を求めず 今、楽しい時間を過ごせればいい と言うケースが存在する。
変化を求めず、楽しい時間を過ごしたい 本人がそう思ってやっているのならば、それも1つの選択である。
ただし、前から言ってはいるが、バレエの場合、ある程度きちんとやらないと、怪我などのリスクが伴う。
そして、お教室あるあるであるが、楽しい時間を過ごしたいタイプの場合、周りが視野に入らないケースも多く、センターレッスンでぶつかるなどの事故を起こしやすいのも事実である。
他人を巻き込まないように、自分の価値観を押し付けないようにだけは、気をつけて頂きたい。
これ以上のことは、ここでは言及しない。
ここで、お話ししたいのは前者について。
上達する、上手になる、成長する。
これが、どういう状態のことか。
意外とはっきりしていない為に、良い方向に向いていても実感しにくい。
3つに分けてお話ししよう。
[明らかに量が変わった]これは、非常に分かりやすい。
以前に比べて、明らかに
・回れるようになった
・脚があがるようになった
・開くようになった
ビフォーアフターの写真を並べたとしたら、誰もがわかる変化であること。
誰もがわかる、或いは、誰でもわかる というのがポイントである。
教師や本人だけがわかる、ではない。
バレエを知らない人が見ても、あなたを知らない人が見てもわかる、明らかな違い。
明らか というのは、人から認められやすいし、認めやすい。
量を敬遠する人もいるが、人に認められやすい武器があると、自信に繋がり、自信に繋がると素直になれる。
だからこそ、敬遠しない方がいい。
無理にとは言わないが、やってみたいと思うならば、トライする価値はある。
次に取り上げるのは、[1ミリ、良くなった] というケース。
人は、ここを見逃しがちである。
指導者だけでなく、本人すら自覚しにくい。
・1年前より、1ミリ開けるようになった
・1年前より、1ミリ上がるようになった
・1年前より、1ミリ位置が良くなった
たった、1ミリ と思うかも知れないが、体で言う1ミリとは、非常に大きなものである。
かつての師匠は、こんなことをおっしゃった。
足元の1ミリは、体全体では何十センチにもなることを忘れるな
足元だけでなく、腕や頭、指先が1ミリ違ったら、いい意味でも、悪い意味でも、全身に及ぼす影響は大きい。
バレエに限った話ではないのだろう。
技術を身につけようと思ったら、この1ミリがどれ程のものか、繊細に感じ取らねばならない。
1ミリ、良い方向に変わった。
十分な上達であるし、成長である。
1ミリを[確実に]捉えることは、簡単なことではない。
1ミリ変化していたら、体全体やテクニックには、それ以上の変化が起きている。
たった1ミリ、されど1ミリ。
立派な、確実な成長であることに気づきたい。
3つ目は、[教師の意図が通じるようになってきた、反応が早くなった]というケース。
個人的には、ここが最も大きな収穫であるように思える。
・バレエの意図が通じる、理解できる。
・教師の意図が通じる、理解できる。
ここに関しては、自分では判断しにくい。
本人が気付くまでに、多少の時間を要する場合がある。
というのも、大抵の場合、教師が先に気づく。
テクニックや体に変化が起こりはじめてから、やっと、本人が気づくものだからである。
本人が気付くくらいになると、既に変化が連鎖して起きている。
つまり、本人が意図していないことまで良くなっていく。
ここまでくると、バレエクラスの中で、教師とキャッチボールが出来るようになる。
バレエの中でのコミュニケーションとは、こういうことである。
ここで大切なのは、成長しているのか、自分に自覚がなくても続けること。
続けていると、良い連鎖が起きる可能性を秘めている。
最後に、最も重要なことをお伝えしよう。
それは、上達している、上手になっている、成長している自分に気づくこと である。
気づけるようになったら、それそのものが、成長である。
自分が良くなっていても、それ自体を認められない人も多い。
自分に厳しいことは悪いことではなく、むしろ、良いことと言えるだろう。
しかし、常に認めない状態は 客観性 に欠けている。
客観視した上で、自分自身が成長しているのであれば、それを認めることも 冷静な判断 であることを、忘れずにいたいものだ。
常に自分を否定していると、何が良くて、何が悪いのかを判断できなくなる恐れがある。
良かった状態が分からないということは、体に記憶するという 再現性 を育てることが難しくなる。
良くなったら、良い動きが出来たならば、今のがgoodなのだ と思うこと、脳に情報を送り込むことも、大切なことだ。
褒めるべきは、自分を褒めよう。
ここからは、ひとりごと。
私たちは、なぜ、上達したい・上手になりたい・成長したい、と願い、行動を起こすのか。
様々な理由があるだろうが、1つは、それが人間としての本能だからであろう。
時として、のんびりと時間を楽しむだけ、これを必要とすることもあるかもしれない。
しかし、程度の差はあれど、成長を望むのが本能であり、自然なことであることは、忘れるべきではない。
なぜ、上達したい・上手になりたい・成長したいのか。
それが、[楽しいことだと知っているから]、私は、そう思う。