頭を支える首の役割|バレエレッスンマニュアル

頭を支える首。
たった1つのこの筋だけは、覚えておいて。

 

本ページに記載の(図)に関しては、大雑把にイメージするものとして書いてある。
厳密な詳細については、専門のイラストなどをご覧いただきたい。
ここではあくまで、大まかなイメージ図として掲載していることをご了承いただく。

 

 

序論:首の役割

長い首を作る、首を伸ばす、スポットをつける、頭の向きを変える。

この全てに共通することは [頭を支える] ということである。

その先に、[頭の位置・向きを取る] が存在する。

 

 

 

本論:教科書では済まされない

頭を支える、位置や向きを取ることは、首の筋によって行われる。

本稿では、首の筋の役割や働き、実際のレッスンでの対処について述べる。

 

 

 

本論1:基礎知識

まず、確認しよう。


胸鎖乳突筋

・起始…胸骨頭・鎖骨頭
・停止…乳様突起および上項線(頭蓋骨)
・作用…頭を傾ける、回転させる、伸展させる、頭が固定されている場合=呼吸(吸息)を助ける。

(図)

 

左右を向くと、斜めに出現するので確認しやすい。

この筋が働いてくれるためには、頭の位置が重要であり、 [すでに長く伸ばされた首であること] が前提となる。


こちらの記事に「首を長くする」ことについて詳しく記載したので、ご覧でない方は、理解を深めるためにも、ぜひお読みいただきたい。

首を長く|バレエでは、やってはいけない伸ばし方

 

 

本論2:胸鎖乳突筋が働いていない時

バーレッスンで後ろのカンブレをすると、頭がだらりと垂れ下がってしまうことがある。
これは、首で頭を支え切れていない証拠である。

 

頭は、相当に重い。

個人差はあれど、体重比で約10%と言われている。(成人の場合)
つまり、体重40キロの人は4キロ、体重50キロの人は5キロとなり、この重さを、首で支えねばならないのだ。

 

この重さを分散させずに、 [まっすぐ前を向いた状態で、後ろに反る] ことは、想像以上に大仕事かつ、負担がかかる。

 

従って、バレエクラスの現場では、頭の重さを分散させる為に [頭を横に向けた状態で、後ろのカンブレをしましょう]と指示が出されることがある。

ここまでは、教科書通りの教え方であり、よくある [バレエ本] にも書かれている。

間違いではない。正解である。

 

 

ただし、実際にはこんな単純な話ではない。

頭を横に向ける時の前提条件は、[肩のラインがバーに対して直角を保ち続けること] である。

しかし、ほとんどの場合、この前提条件が崩れてしまう。

 

これでは、最も重視すべき空間認識が狂い、平衡感覚さえ雲行きが怪しくなる。現実は、教科書のようにはいかないのである。

 

 

 

 

本論3:レッスンマニュアル

首の筋を活発に活動させることと、肩のラインを保つことは、密接な関わりがある。

首の筋は、レッスンで正しく動かすことで、強度を増すことが出来る。

何より、正しいレッスンの流れが重要であることを忘れてはならない。

 


マニュアル

ステップ1
▶︎頭の高さ、位置を取る。

▶︎バーに対して、両肩を結ぶ線が直角になることを徹底する。

▶︎頭の向きはつけず、まっすぐ前を向く。

 

ステップ2
▶︎頭を立てたまま、向きを変えてみる。

 

ステップ3
▶︎頭の角度をつけてみる。

 

[ステップ1]では、いわゆる [顔] をつけずに、終始、まっすぐ前を向く。

 

[ステップ2]では、頭をまっすぐに立ててまま、バーの外側や内側を向くが、頭がだらりと寝てしまってはならない。

この時、肩のラインが崩れていないか、注意すること。

 

[ステップ3]まできて、初めて [のぞく・見下ろすように] という傾きが入る。

つまり、胴体の傾きに頭を沿わせるが、これを行う場合、十分な強度があることが条件である。

条件が整わないうちに、慌てて[ステップ3]を行うと、力が抜けてしまったかのように、頭が寝てしまう。

 

重要なのは、頭を真っ直ぐにしたまま、左右を向けるようにすることである。

そうしないと、筋が育たず、頭の重さの支え方を覚えない。

また、首の可動域が獲得できないため、回転を行う際にスポットをつけようとしても、可動域不足のためのブレが生じてしまう。

適切なレッスンをしていたら、首の可動域は必要分、獲得できる。

 

 

 

 

結論:傾げる前に [立てる]

バレエ形式・様式において、頭を立てることが出来れば、[ステップ3]が厳密に出来なかったとしても、マイナスの影響は極めて少ない。

しかし、頭が寝てしまっている状態で、向きや角度を付けるのは、バレエの形式からは逸脱している。

 

結論を言えば、「本論3:レッスンマニュアル」の [ステップ2] まで出来れば、十分である。

そこから先は、ちょっとした [トリック] で解決できるからである。

 

 

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