自分のウィークポイントを知る。
自分自身を知ることは、大きな前進である。
本ページに記載の(図)に関しては、大雑把にイメージするものとして書いてある。
厳密な詳細については、専門のイラストなどをご覧いただきたい。
ここではあくまで、大まかなイメージ図として掲載していることをご了承いただく。
序論:特性と言うべき足指
バレエでは、日常生活時と比べて、はるかに細かく、強度の高い足指操作が求められる。
特に、女性ダンサーは「ポアントシューズ」(トウシューズ)という ”つま先立ち” をする靴を着用することもあり、大きな課題の1つとなっている。
本稿では、ポイント(つま先を伸ばしたポジション)を形成する上で「阻害因子」となる、足指が丸まってしまうという事象について述べる。
本論1:環境を作ることの重要性
足指が丸まってしまう、だから、伸ばして使えるようにしたい。(しなさい)
ごもっともではあるが、実際には、そう単純ではない。
「足部」は、体の中でも、最も下部に位置しているため、重さの影響を受けやすい。
エクササイズが上手にできたとしても、立ってバレエをする時に、活用できなければ意味がない。
エクササイス好きが陥りやすい盲点である。
”立った時にできる”
これがなければ、バレエとして始まる事すら出来ない。
ぜひ、自分で確認してみて欲しい。
1番ポジションに立った時、足指が床から浮いていないだろうか。(浮き指)
もし、浮いているのであれば、アンディオール を形成するファクターの1つである「脚のセンタリング」が出来ていない。
ここで大事なことは「脛を寄せる・集める」ということである。
正しく出来ているならば、「脛を寄せる・集める」をした結果、長趾伸筋が活動しているはずだ。
この長趾伸筋は、足指を伸ばす役割をになっていて、大人の場合、バレエらしい脚・足のライン・フォルムを出せるか否かのポイントとなる。
ただし、勘違いしてはならない。
長趾伸筋を発動させれば、勝手に「脛を寄せる・集める」ができるのではない。
あくまで、「脛を寄せる・集める」をした結果、長趾伸筋が活動するための「チケット」をもらえるということだ。
なぜ、「チケット」なのだろう???
長趾伸筋の筋レベルや、出力がそれなりにあって、そのうえで「動かし方」の問題であれば、
”当選、おめでとうございます” ではないが、「脛を寄せる・集める」をすることによって、活動開始となる。
宝の持ち腐れだったものが、「宝」になる。
一方、長趾伸筋の活動があまりにも微弱だったり、阻害因子が強い場合、「脛を寄せる・集める」をしても、長趾伸筋は冬眠状態から起きてはくれないであろう。
この場合、レッスンとは別に「ワーク」が必要となる。(エクササイズではない)
チケットは獲得することができる。
そこから、劇場なり、映画館なり、実際に行くことができるのか。
チケットは獲得できたが、行くことができないのか。
それは、その時の体の機能によって変わる。
とはいえ、チケットがなければ、劇場に行っても、映画館に行っても「お目当てのもの」を手に入れることはできない。
脛と足指の関係。
「脛を寄せる・集める」が出来ず、あるいはせずに、外側に割れる・流れている場合、足指を正しく動かすことは出来ない。
つまり、脛が足指を正しく動かせるための「環境」を提供するのだ。
特に、立位では、非常に重要なファクターとなる。
これは、しっかりと覚えておきたいことである。
バレエにとって、足の甲から繋がっている膝下前面の筋は、重役クラスの任務を請け負っていることを、ぜひ知っていただきたい。
<やってみよう>
1番ポジションに立ち、脛 上部2分の1を中心に向かって寄せる。
<attention>
・全てのポジションで出来るようにすることが望ましい。
・膝ではないことに注意。
・片脚でも同様。
→ex)バットマン・タンジュにおいて、支持脚の脛と動作脚の脛を寄せる。
本論2:足関節と”避けるべきこと”
ポイント、つま先の伸ばし方は1つではない。
「正しいつま先の伸ばし方」は、いくつか存在する。
(正しい…バレエとしても、解剖学と物理学(運動学)としても)
従って、1つの方法で最善のポイントが出来なかったとしても、ガッカリすることはない。
他の方法を試すことが必要である。
ここで知って欲しいのは、ポイントのバリエーションではない。
それをやるにしても、絶対に押さえておかねばならない「前提」がある。
ここでは、誰もが通るべきつま先の伸ばし方、機能獲得について述べる。
足指の関節を観察する。
IP関節…趾節間関節
DIP関節…遠位趾節間関節
PIP関節…近位趾節間関節
MP関節…中足趾節関節
(第一趾は構造上、DIP・PIPという分類はない)
足指と言っても、こうして見るとわかる通り、細かい関節が多くある為、一括りにはできない。
「足指が丸まる」とは、具体的に、どこの関節のことを指しているのだろうか。
あなたは、答えられるだろうか。
丸まる、ここでは「屈曲」を意味する。
(屈曲…曲げる)
バレエでのポイントポジションを取るにあたり、最初に行うべき・習うべき方法がある。
それは、「DIP・PIP関節の屈曲を “伴わない” ポイント、つま先の伸ばし方」である。
大人の場合、日常何もしないふとした瞬間、この2つの関節が屈曲していることが多い。
(特に、第二趾・第三趾に、その傾向が強く現れていることが多い)
無意識の状態で「0(ゼロ)」に近いのではなく、すでに屈曲している状態がスタートとなっている。
大人を指導する教師は知っておくと良いだろう。
教師にとって、足指を伸ばすことは「慣れ」で出来る、いつか出来る、と思うのかもしれない。
しかし、1日のほとんど、この2つの関節を曲げて過ごしているわけだから、レッスンに来た時「だけ」伸ばそうとしても、困難である。
「なぜ、出来ないの!!」とヒステリックに叫ぶことはやめて、少しでも、足指が伸びる「兆候」を見逃さず、ガイドしたいものである。
どんなつま先の伸ばし方であっても、「DIP・PIP関節の屈曲を “伴わない” ポイント、つま先の伸ばし方」は、一定期間、しっかりと行わなければならない。
ここを通ることをしなかったら、「甲の高さ・強さ」に影響が出る。
「DIP・PIP関節の屈曲を “伴わない” ポイント、つま先の伸ばし方」無くして、甲を高く形成することも、引き伸ばされた強さを持つことも、できないのである。
<やってみよう>
・DIP・PIP関節・MP関節、足指全体を反らせる。
・タンジュなど、実際のバレエ動作で同様に行う。
<attention>
以上をやってみて、感覚がない・全く動かないという場合は、「JBPテキスト ストレッチ末梢編」(注1)に記載のウォームアップから行うと良い。
刺激を与え、硬化している足を動かせる・感覚が得やすい状態にすることが可能と思われる。
結論:自分自身を知る
足指と、大雑把に一括りにせず、具体的にどこが丸まっていて、意識すべきかを明確にすることは、有効な手段と考える。
・DIPのみなのか
・PIPのみなのか
・両方なのか
・どの足指なのか
自分の足を観察し、ウィークポイントを知ることは、効率よく改善方向へと導いてくれる。
具体性を持って、阻害因子を除去したいものである。
注1 テキスト「ストレッチ末梢編」 JBP著
テキスト『ストレッチ末梢編』