まずは、肋(あばら)を知ろうではないか。
こちらから、歩み寄ってみるのだ。
本ページに記載の(図)に関しては、大雑把にイメージするものとして書いてある。
厳密な詳細については、専門のイラストなどをご覧いただきたい。
ここではあくまで、大まかなイメージ図として掲載していることをご了承いただく。
序論:肋骨のオペレーションと加齢による変化
肋(あばら)は、閉じるのか、そうでないのか。
どちらも一理ある指導言語である。
いずれにせよ、目的に沿ったオペレーションを要する。
また、踊っている時の息苦しさ、呼吸が速くなるなどは、加齢による体の変化と密接な関わりを持っている。
本稿では、こうした事柄に関しての基礎知識と呼吸について述べる。
本論:バレエと加齢への対処|肋を動かす為に知っておきたい事
本論1:基礎知識
肋骨とは、胸郭を構成する骨のことで、胸部を覆っている。
左右に12対あり、合計で24本存在する。
肋間とは、肋骨と肋骨の間を指す。
肋間筋とは、肋骨と肋骨を繋げている筋のこと。
呼吸筋とは、呼吸に関わる筋のことを言い、横隔膜や肋間筋、腹斜筋や胸鎖乳突筋などが含まれるが、本稿では、横隔膜と肋間筋を取り上げる。
本論2:胸式呼吸・腹式呼吸
呼吸というと、肺自体が伸び縮みし、自ら動いているように感じるかもしれない。
だが、実際は、肺自体が動くことではなく、胸郭の容量変化によって呼吸が行われている。
この胸郭の容量変化には、呼吸筋が大きく関与している。
▶︎外肋間筋・内肋間筋を使った呼吸→胸式呼吸
▶︎横隔膜を使った呼吸→腹式呼吸
通常は、腹式呼吸が優位であるが、激しい運動(バレエやスポーツなど)をする際は、胸式呼吸が優位に働く。
つまり、バレエをしている時、日常よりも胸式呼吸が優位になっている。
激しいジャンプをした後は、胸がゼーゼーして息苦しくなる。
普段より胸で呼吸していることを、実感できるだろう。
本論3:加齢への対処
肋間は狭く、操作しにくい。
姿勢不良や加齢、呼吸の仕方が良くない等の原因で、呼吸筋の弾性が欠けると、さらに肋骨の操作がしにくくなる。
バレエの稽古場では、[肋を閉じて]という言葉の方が、[肋を閉じないで]よりも、はるかに多く耳にすることと思う。
肋を閉じようとする時、今現在の状態から閉じようとしても、肋間筋が働ける環境にないと、様々な代償行為が発生する。
▶︎肩を丸める。
▶︎背中を丸める。
▶︎胸を落としてしまう。
また、筋の十分な働きがないと、浅い呼吸になり易い。
息を吐いた後に肺の中に残る空気の量を[残気量] というが、加齢と共に、呼吸筋や肺の弾性が衰えることで、残気量が増えてしまう。
結果として、しっかり吸えない、息苦しい、浅くて速い呼吸になる等の問題が発生する。
これは、バレエだけでなく、日常生活においても影響が表れる。
快適な生活を送る上でも、バレエを楽しむためにも、対処したいことの1つである。
結論:バレエへの影響は大きい
肋を操作するためには、動かせる状態にしなければならならない。
リリースで緩和し、肋間筋をはじめとする呼吸筋全般が、活動できる環境を整える。(注1)
これを行わないと、肋骨を動かす筋が、必要とする距離を取ることが出来ない。
肋間筋に関しては、範囲が狭い為、ストレッチやエクササイズでは、対応することが難しい。
その為、呼吸を活用することとなるが、ただ、吸ったり吐いたりしても、肋間筋が働くまでには至らない。
肋間筋の収縮弛緩を意図的に行い、肋骨を動かすことが求められるのである。
そこには、ちょっとしたコツを要する。
肋骨は、バレエにとって、フォルム形成をする大事な役割を担っている。
特に、骨盤を可動している場合、肋骨の操作なしでは、肩のラインを水平に保つことが出来ない。
また、引き上げをはじめとして、体を高く保つことや、腰背部をしっかりと支えることに、直接関与している。
もっと言うならば、肋骨の操作が厳密に出来ているならば、体幹というのは、勝手に入ってくれる。
地味な肋骨に目を向けたら、これまで解決の糸口さえ見えなかったことに、ヒントが生まれるかも知れない。
加齢への変化に対応することが、日常生活を過ごしやすくするだけでなく、バレエテクニックにも直接役立つことを知っておきたい。
まさに、一石二鳥である。
注1:呼吸筋に関するリリースについて、実践編を掲載しています。
テキスト『リリースエクササイズ』