ファクトを受け入れる事が出来れば
道は拓ける。
序論:耳にタコな言葉たち
筋肉を長く使って!
ギュッと固めないで!
こうした言葉を耳にしたのは、一度や二度ではないだろう。
バレエ教室で “耳にタコ” な言葉たちである。
ちなみに「固める」と言う言葉、間違った意味で使われる事が定着していて、非常に困っている。
定着してしまうと、何かと不便だ。
正しく「固める」のは簡単ではなく、特に大人にとっては、かなり難易度が高い。
とはいえ、本来、入門、遅くても初級の段階で身につけておかねばならない事なのだが…。
話が脱線したが、ここでは分ける為に、「ギュッと固めて」ではなく「ギュッと縮めて」と表現する事にしよう。
本稿では、筋を長く使う事について述べる。
本論:筋を長く使う為に必要なこと
本論1:昔からある勘違い
そもそも、なぜ、筋をギュッと縮める事を嫌がるのか。
恐らく、短距離走の選手のように、肥大した筋が付くのだと勘違いしているのだろうし、恐れているのだろう。
脚で考えると分かり易いが、要は、”たくましい、ゴツゴツとした硬い筋が付き、その結果、外観的にも太くなる” 印象なのである。
その証拠に、「太腿を使い過ぎなんです」とおっしゃる人のほとんどは、筋を使っていない時間が長く、硬化してしまい、機能不全に陥り、引き締まっていない状態なのにも関わらず、「使い過ぎ」と言うのだ。
要するに、使いすぎているから脚が太くなった、と言いたいらしい。
この場合の硬化、硬くなるとは、意図的な「固める」とは、全く異なる。
長い期間、望ましい活動をしなかった為に、筋の弾性が失われていると言う意味である。
寄りかかり現象は、大人バレエに最も多い硬化の原因である事を記しておく。
本論2:内容が異なることを受け入れる
一つ、考えて欲しい。
短距離走の選手のように、ある種、脚が太くなるのには条件が揃う必要がある。
▶︎競技に適していると思われる選ばれた人材が
▶︎記録を出すためのハードな練習と
▶︎その為に必要なハードなフィジカルトレーニングをする
こうした条件が揃わないと、「太い」と言うほど、筋は発達できない。
まさしく、努力の証としての「太さ」である。
特に女性においては、並大抵の努力では「太い」と言うほど、筋を肥大させるのは難しい。
”太さ”だけをとって、問題をすり替えるべきではない。
例え、同じ太さであったとしても、機能的な役割を果たす”太い”と、機能不全である”太い”では、内容が異なる。
本論3:バレエの特徴
ここでは、専門用語や難しい言葉を省いて説明したい。
伸ばして使うと言っても、この場合、実際には筋は収縮している。
ゴムが縮もうとする時、抵抗を感じると思うが、あの状態である。
あれが「力を生み出している、パワー」である。
”伸ばして使う、長く使う”=筋が長くなりながら収縮をする、言葉にすると、ちょっとおかしな感じがするかもしれない。
ゴムを引っ張ると長さ自体は長くなるが、その分、縮まろうとする。
あの状態を思い浮かべよう。
もう1つ、説明しておきたい事がある。
筋A・筋Bという組み合わせがあるとしよう。
筋Aが収縮した時に、筋Bが弛緩するというメカニズムがあり(相反神経抑制)、動きはこうして生み出される。
まず、メカニズムが正常に働くようにせねばならない。
例えば、プリエやフラッペ、プティバットマン、ロンドジャンブアンレールは、このメカニズムが働かないと、その形を成す事が出来ない。
一方でバレエでは、もう1つ必要なのが「筋Aが収縮、筋Bも収縮」というシステムである。
ここが、トレーナーや治療家、医師等が見落としがちな事なのだ。
なぜなら、他のスポーツやダンスと比べても、バレエほどこのシステムが主となり、成立しているものはないからである。
つまり、バレエの特徴と言ってもよいほどのシステムである。
長く使うとは、このシステムに該当する。
結論:力が入ること自体は、良いことです
長く使うと言っても、実際には筋が収縮するのだと、ご理解頂けたかと思う。
ギュッと縮められるのは、それ自体は良い事である。
力を入れる事が出来ない大人が多い中、なかなか立派だ。
指摘されたとしても、ガッカリしないで欲しい。
次の段階へと進もう。
力を発揮できるのであれば、ペアになる筋も力を発揮できるようにしよう。
そこまで出来たら「配合」の問題だ。
”A:B”をどの割合で力を発揮するのが、適切かという事である。
これが、形にも、筋バランスにも、大きく影響するのである。
同じ筋を使うと言っても、様々なパターンを必要とする。
運動パターンは豊富な方が良い理由の1つである。
知れば知るほど、面白く感じるかも知れない。
▶︎参考
○筋システム、配合を知る
https://juncotomono.info/program/20201209-wbp-trunk/