大人バレエ、なぜ上達しないのか?

大人バレエ、なぜ上達しない

バレエとは”美しさを魅せる芸術”であることを、私たちは忘れてはなりません。

それは終わりのない、果てしなく続く道程ではありますが、その道程において、身体改善・技術習得・教育哲学など、他に類を見ないほどの学ぶを得ることができます。

私たちは、成長を望む全ての人に、『形』で表現できることを手助けしたい。
あくまで、中心は『受講生』であり、教師がそれを支える指導者であると据えています。

1.ジュニアと大人の違い。
バレエは性質上、『職業訓練』としての役割を担っています。

幼少期から職業バレエダンサーとしての訓練を受けるため、バレエメソッドは子供に対応したものとなっています。

主に、身体機能向上・年齢による段階別カリキュラム・ベースメント向上などが上げられます。

大人の場合、このようなメソッドは、本来適しません。
主な理由としては、3つ。

①運動記憶による、神経系スイッチングを必要としていること。
②年齢ではなく、経験値による段階別指導を必要としていること。
③日常生活による、身体の偏りを加味する必要があるということ。

つまり、大人の方に対応できるメソッドが必要となります。

ジュニアと大人では、異なる点が多々ありますが、実は『大人がどうしたら上達するか?』を突き詰めていくと、バレエの本質的要素が見えるということを、忘れてはなりません。
子供は、反射的にできてしまうことが多々あります。
しかし、アンディオールや立ち方といった『バレエの基礎』と呼ばれる部分につまづいた時、子供用のメソッドでは対応できないことがあります。

本質を突き詰める大人バレエダンサーがいることで、バレエ界全体が変わる、ということを胸を張って取り組んでいただけることが、JBPの願いの一つでもあります。

2.体感による問題。
JBPでは、理論に基づいたものでない限り、大人バレエの方への
「○○のように』と言うサジェスチョンを推奨しておりません。

「○○のように」と言うサジェスチョンは、教師の主観が色濃く反映します。
教師と大人バレエの体感は、大きく異なります。
教師の要望に応えようとしても、対応することが難しいことの1つです。

教師は大方、子供時代に、バレエ仕様の身体に作り変えています。
そのため、教師の体感と一般認識の違いが感じ取れない傾向にあることは、確かです。

教師がサジェスチョンをした際は、まず「何を基準にしているのか?」を知る必要がありますが、大方、バレエ仕様の身体になっていることが前提となります。
従って、バレエ教師が指導するエクササイズ、コンディショニング指導なども、このことが前提となっているため、大人の方には適応しにくいという現実があり、また、欧米の国立バレエ学校のように選別をしない日本では、ジュニアにも、本来拾われるべき才能がこぼれ落ちてしまうという、悲しい現実があります。

3.「見える」と「実際」は、異なると言うこと。
JBP結成のきっかけは、代表である友野隼子の子供クラスで、身体条件が恵まれていないのにも関わらず、
・頭よりも脚が上がる
・ものの数回で、1回転もままならなかった生徒が、2回転、3回転と回る
という事実があったことがきっかけでした。

バレエ業界では常識と思われる、『ストレッチ』や『骨盤を正しく保つ』などを、一切口にしないと言う指導方針に興味を持ったメンバーが集結しました。

しかも、『正しい』と言われていることを一切口にしないこの指導法では、大きな怪我をする生徒がいないばかりか、症状を持った生徒が改善に向かうという、今でいう”医療チーム”も目を見張るほどの成果を出していたということに、バレエの本質が秘められているのではないかと、思ったのです。

さて、「見える」と「実際」の違い。

これは、文化の話も関係します。
基本的に、欧米の大きなオペラハウスでは、奥行きをみせるために「傾斜」が存在します。
舞台奥から客席側に向かって、下り坂のようになっているのです。
ロシアなどの限られたバレエ学校では、稽古場も舞台に対応した仕様で、傾斜が入っている場合があります。
この場合、一般的にいう「まっすぐな姿勢」では、客席に向かって転がってしまいます。
上体が常に後方に引っ張られた形式をとり、そのことで、アンディオールが可能となっているわけですが、何も考えずに見たら「まっすぐ」にみえるのでしょう。

骨盤にしても然り。

実際は、タンジュの時点で骨盤は傾きだしますが、それに伴い、上体が分離作業を行います。
その分離作業が行われなかった場合、骨盤が著しく傾いて見えてしまいます。
こうした時に骨盤を揃えようとすると、アンディオールすることが可能な環境を、自らなくすことになるのです。

このような場合、何を優先させ、何を後回しにし、どの時点では目をつぶるか?が教師の重要な判断となります。
全てが一度にできる、わけではありません。
段階別指導とは、優先順位をつけること、とも言い換えることができるのです。

4.みてわかる、認識できる指導法。
ここからは、レッスン中における「理解」の話になります。

レッスン中に、自らがサジェスチョンを受け改善を行おうとする場合ではなく、全体に対してのサジェスチョンの場合、全て自分自身に当てはまるとは限りません。(JBPではなく、一般的なバレエクラスの場合)
その際に、教師がどういったタイプに対し、何を改善するためにサジェスチョンをしているのか、理解する必要があります。

つまり、自らの特質を知っている必要があります。
これには、クラスレッスンにおいて、クラスメイトの動作分析ができるかどうかが”キー”となります。

動作分析というと難しく感じるかもしれませんが、見ている人自身がどういった特質があり、何を改善すれば良いのか見極めるという、シンプルなものです。

その際に、判断材料となる知識を持っていないと、判断することさえできません。
また、判断材料があったとしても、何に向かっているのか?を明確に持っていないと、道が外れた判断となってしまいます。

冒頭で、”バレエは美しさを魅せる芸術”と言いましたが、美しさとは余裕があること、とも言い換えることができます。

美しく回っていても、美しい時間が短ければ、つまり、動きの頂点が短ければ『美しい』という印象にはなりません。
そして、形を追い求めるあまり、技術的に余裕がないのでは美しいとは思えないでしょう。

5.美しさを勘違いしない。
JBPの研究では、妥協しません。

例えば、ピルエットを例にとってみましょう。

回れなくてもいいから、美しく
回れているけど、美しくない

JBPでは、どちらも良しとしません。

回れて美しく、余裕を持って。

方法を知ること、理論を知ること、それに対応した身体を手に入れること、実践すること。
実際に、大人から始めた方でもできるのです。

私たちは、教師が受講生の可能性を止めることは、あってはならないことだと考えます。

だからこそ、本気の人の受け入れを行い、悩んだ時に戻れる環境を整えています。

 

 

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