セット価格とは、
よく出来たものだ。
体もセットがお買い得である。
序論:教師の意図を知る
プリエは、ルルヴェやジャンプ、ピルエットの前動作となる動きである。
故に、何らかの動作が不十分である時、プリエが十分に仕事をしているかについての指示が出現する。
「しっかりと床を踏んで!」
この言葉に込められた教師の意図は何か。
本稿では、プリエで床を踏めない事への対処と考え方について述べる。
本論:プリエで床を踏めない|対処法と考え方
本論1:”神経を行き届かせる”の意味
そもそも、プリエにおいて、しっかり床を踏む事が必要な理由は何なのか。
最も重要な事は、これに尽きる。
プリエで、床をしっかりと踏む。
↓
上半身の力を末梢まで伝える事が出来る。
”頭のてっぺんから爪の先まで、神経を行き届かせる” という言葉があるが、正しく、その通りなのである。
神経…と聞くと、何だか空想的に感じるかもしれないが、言わんとしている事は、力を伝える事だ。
上半身の力の伝達が、途中で途切れてしまったならば、その後に続く、ルルヴェやジャンプのエネルギーを十分に蓄える事が出来ない。
足指が丸まったり、足底がドーミングしている状態は、爪の先まで神経の伝達が行き届いていない。
特に大人は、早めに対処した方が良い。
本論2:伝達の要素
”上半身の力を爪の先まで伝達する” という事は、「上半身が適切な力を発揮出来ている事」が前提となる。
伝達すると言っても、伝達する物がなければ、そこから先はない。
つまり、そもそもの発信源でエネルギー切れを起こしているのであれば、補給する方が先である。
車があっても、ガソリン切れでは、走る事が出来ない。
ガソリンというエネルギーが満たされ、エンジンをかけ、循環し、動く事が出来る。
もう1つ、前提がある。
プリエという動きの性質上、大腿部が適切な活動をしている事も、床を踏む以前に必要な要素である。
”床を踏む=力を伝達する” とは、あくまで “発生している力を伝える事” である。
重ねていうが、伝えるものがない場合、伝達する事は出来ない。
本論3:間違った力のつり合い
これらを踏まえて、床を踏む=力を伝達する 為の考え方と方法を述べる。
下半身で、体から最も遠位になるのが、足部、特に足指である。
ここまで神経を伝達する。
当然、こうした末梢をどうするかという話にはなる。
プリエで床を踏めない時にありがちなパターンを、もう一度、整理しておこう。
▶︎足指が丸まってしまう。
▶︎土踏まずを上げようとドーミングをし、逆方向の力が働いてしまう。
この2つは、典型的な例である。
対処法と考え方を述べよう。
プリエをする時、膝は、体から遠ざかる。
外側に”開く”からである。
プリエでは、脚を回すことよりも、膝を外方向に遠ざける意識が重要だ。
床を踏めない時、”膝を遠ざける+末梢を近づける” 事で、力のつり合いを取ろうとしてしまう。
この時に、形となって現れているのが、上の2つの典型である。
プリエで膝が遠ざかる時、足指も同一方向へ遠ざかるべきである。
そうしないと、力の伝達がうまくいかず、途中で途切れてしまう。
つまり、神経が行き届かない。
膝と足指は、外方向へと働く。
内方向に働き、力のつり合いを取るのは、”足首と脛” である。
ここは、体の中心に向けて、寄せ続ける。
結論:セットで捉える
人は、バランスを取ろうと、常に、力のつり合いを取り続ける。
この”力のつり合い”の”取り方”を間違うと
・正しい筋や関節の活動をしようとしても
・然るべき方法をしようとしても
阻害因子、つまり”邪魔をする要素”となってしまう。
力のつり合い方を間違えてしまうと、間違った体感を認識し、気づく事が困難になるケースが多い。
また、力のつり合いそのものが弱い場合、今回のような “床を踏む” をはじめとして、床を圧す、引き上げる等、力の方向がモノを言う要素が身につきにくい、または、誤認しやすい。
こうした問題は、初心者には現れにくい。
まだ、そこまで進んでいないからである。
ある程度の経験を積んだ人、または、それ以上のレベルになって表面化してくる。
言わば、まるっきりの初心者じゃないからこそ、現れる問題なので、ある種、そこまで頑張ってきた証拠とも言える。
何かを動かす時、逆方向の力がセットで働く事を意識すると良いだろう。
プリエでの足指は、伸ばすか、やや反り返るくらいが良い。
そうすると、上半身の力が末梢に伝わるだけでなく、足指の力が膝下に伝達していく。
こうする事で、しっかりと床を踏んだプリエとなり、さらに「集めた」プリエとなっていく。
副産物として、正しく行えていれば、土踏まずは勝手に上がる。
レッスン前に確認してみるのは、いかがだろうか。
予め、体に覚えさせたら、レッスンで多少意識が抜けたとしても、スイッチは入りやすい状態を作る事が出来る。