何度でも言おう。
カンブレは、ストレッチでも準備体操でもない。
✳︎本稿では、カンブレと表記している。
JBPに参加されている方は、カンブレとポールドブラの違いを考慮してお読み頂きたい。
ここで述べている事は、ポールドブラに該当する。
序論:軽視されやすい動作の1つ
カンブレデヴァンとは、上体を前に移動させる(倒す)バレエ動作である。
バーレッスン冒頭での プリエのコンビネーションを始めとして、特にバーレッスンで多用される。
上体を弓形に動かすカンブレは、重要視されにくい。
レッスン時間の制約や生徒の進み具合などもあり、他項目の優先順位が高くなってしまう。
しかし、カンブレには 脊柱の独立した可動 という、大人にとっての難関が待ち受けている。
非常に高度で、重大な要素が含まれているのである。
カンブレが正しく出来ないということは、ほとんどのバレエ動作も正しく出来ていないということ。
バレエテクニックを獲得すればするほどに、その重要性の認識が増すのである。
本論:カンブレデヴァンの間違いと弊害|バレエレッスンでの改善策
本論1:カンブレデヴァンで起こりやすい2つの間違い
カンブレは、単なるストレッチではない。
ここでは、よく起こる2つの間違いを取り上げる。
①脚が割れてしまい、隙間が生じる。
②腕が抜けてしまう。
①補足
上体が前に移動すると、脚が外側へと流れ、両脚の間に隙間が出来てしまう。
バレエで最も重要な要素である、脚のセンタリング が不十分な状態である。
センタリング(寄せる)は、アンディオールを構成する主要エレメンツである事から、絶対に欠かすことは出来ない。
②補足
上体が前に移動する際、胴体は移動するが、腕だけ取り残されてしまうというケース。
結果として、ポジションから外れてしまう。
本論2:間違いから生じる問題点
カンブレでは、高度なオペレーションが要求される。
ただ、何となくやるならば、さほど難度は高くない。
しかし、厳密に動くには、相当な技術を要する。
さらに、他の動作への応用が幅広く、ほとんどのバレエ動作に影響を及ぼす。
①の問題点
この場合、 上体が前に移動する=脚が割れる という動作パターンが、癖としてついてしまっている。
上体を前に移動する代表的な例に アラベスク が上げられるが、間違ったカンブレデヴァンを体が覚えると、アラベスクにおいても間違いを生じてしまう。
<上体が前に移動する=脚が割れる という動作パターンを持っている場合におこりやすい間違い>
▶︎支持脚が割れてしまう、外側へ流れてしまう。
▶︎支持脚のアンディオールが出来ない。
▶︎骨盤のプレーシングが取れない。
▶︎動作脚がの膝が、下を向いてしまう。
▶︎足部外側に荷重してしまい、支持足がカマアシになる。
このように、他の動作へと弊害が生じてしまうことを忘れてはならない。
②の問題点
スタートポジションでの 胴体と腕 の関係を保つことが出来ず、上体の移動=上体の変形 というパターンに陥っている。
腕が取り残されると、腹部や腰背部の緊張が抜けてしまう。
逆パターンもある。
緊張が抜けるから、腕が取り残される。
いずれにせよ、上体の重さを支える機能が失われている緊急事態である。
この場合、上体の重さを股関節にかけることで、股関節屈曲を行っている為に、①脚が割れるという現象の原因となり得る。(注1)
本論3:改善策
①のケース
脚が割れているならば、寄せればいい。
確かにそうだが、もう少し、丁寧に観察する必要がある。
脚が割れているケースの場合、大抵は [腿] に隙間が空いていることが問題となる。
だからと言って、この段階で腿を寄せようとするのは、時期尚早である。
なぜならば、脚を後ろに引いてしまうことで、寄せようとしてしまうからである。
カンブレデヴァンにおいての [脚を寄せる] というサジェスチョンは、既に脚が寄っている段階において、更なる強化とクオリティアップを求める為である。
脚が割れている段階においてのサジェスチョンとしては、間違ってはいないが、ベターではない。
この場合は、 足首を寄せる が良い。
腿と膝の引き上げが未熟な為、実際のレッスンでは、この2つの部位ではないところから、アプローチを図る。
足首を寄せることで、重さが下に流れることを防ぎ、荷重位置や大腿部の緊張を促す。
②のケース
スタートで、アラセゴンに差し出されて手がアロンジェになったら、その時の胴体と腕の関係性を保ったまま、上体を移動させていく。
個人差はあるが、大凡、90度に移動するまで、腕は、アラセゴンのポジションを保たねばならない。
結論:脊柱に現れる影響
適切なカンブレをしていると、脊柱の可動を促してくれる。
本稿では、カンブレデヴァンを取り上げたが、それぞれの方向へのカンブレを正確に行うことにより、脊柱の形状をあるべき姿に整える手助けもする。
もう一度、言おう。
カンブレは、ストレッチでも、準備体操でもない。
発展性の高い、大切なバレエ動作である。
筆者は、カンブレの重要性を認識出来ず、厳密に出来ず、単なるストレッチにしてしまっていた経験がある。
バレエの基本、ではなく、個々それぞれにとっての基本を指導していた教師によって、やっと見出すことが出来た。
最初から、大切さ、重要さを認識していたわけではない。
あなたも、出来る。
そう思う。
注1:股関節屈曲=股関節を曲げること。この場合、上体を前へ移動させた状態を指す。
参考:脊柱に関しての基礎知識に関して掲載している。
▶︎▶︎トルソースクエア に求められること