通常のバレエクラスでは、バーレッスンは受講者全員が一斉に行います。
JBPでは、ほとんどのプログラムで、敢えて2グループに分けて行っています。(※1)
そこには、ちゃんとした理由があるのです。
1,バーレッスンを見る機会がほぼない。
冒頭にもお話しした通り、通常、バーレッスンは一斉に行われるため、同じクラスを受けている人の動きを見ることができません。
センターレッスンが、グループ分けをされているのとは対照的です。
バーレッスンはセンターレッスンとは違って ”見せ方・演出の仕方” よりも、体の機能を高めること、位置や角度の厳密性などが求められます。
センターレッスンでは「今の自分の能力・技術で、どうしたらより美しく、よりテクニカルにできるか」を追求するのに対し、バーレッスンでは「自分自身の能力向上」を行います。
ある意味、対照的ですね。
この点において、自分だけで追求しようとすると、どうしても「客観視」を失いがちです。
同じアンシェヌマンを、自分以外の人が取り組んでいるのを見て、どの動きで、どのような「傾向」が出やすいのか、あるいは、教師が言っていることをどのように解釈しているのかを、注視してみましょう。
それによって、動作分析の入り口に立つことができます。
動作分析ができなければ、「何がどうあるべきなのか、何が美しいとされていることなのか」判断することができません。
判断することができないということは、自分への反映もできないことを意味します。
2,相手の動きを見る意義。
JBPでは、アンシェヌマンに取り組む前に、「どのパーツが、どこに来るべきか」位置を指定し、ペアになって確認してもらうことがあります。
通常のレッスンでは、教師が指摘したことの「再現」の繰り返しになりますが、これだと、再現するのは難しい。
特に、教師が触って修正したものに関して、「もう一度、同じことをしなさい」と言われても、感覚しか頼るものがありません。
そして、受け身のレッスンになりがちです。
JBPではこうしたことを避けるため、受講者が「積極的姿勢でレッスンを受けるための”受け方”」として、教師しかチェックできないのではなく、自分でもチェックできる方法として、パーツの位置指定を行っています。
(ただし、ペアになる時において、あくまでチェックであって受講生が指導してはならない)
バーを2つに分けることで、実際のアンシェヌマンで相手がどの位、チェックしたものができているのか、観察してみましょう。
観察したときはできていたのに、音楽がかかると、ポジションが加わると、脚や腕の動きがつくことによって、同じことができている場合もあるでしょうし、ちょっと足りないだとか、他が崩れてしまっている場合もあるでしょうし、中には、チェックした時よりも良くなっている!という場合もあるでしょう。
実際のアンシェヌマンで、どのくらい変わるのか(良くも悪くも)観察すると、自分に反映することができます。
崩れていたら、足りなかったら、自分のときはどうしたら良いのか作戦を立ててみます。
3,ペア以外の複数の人を見てデータ収集。
大人の体は、人によって「個体差」が大きく存在します。
画一化できない難しいところ。
ペアの人の観察が終わったら、ぜひ、他の人も観察してみて。
できれば、そのときバーについている受講生全員。
みんな、同じチェックをして、同じアンシェヌマンに取り組んでいます。
同じ状況です。
チェックしたこと、できていますか?
まずは、ざっとこれだけで良いですが、慣れてきたら「どんな動きの時に崩れやすいのか・足りなくなるのか」複数人を見て、データを取ります。
例えば「タンジュ」のアンシェヌマンだったら、「後ろのタンジュの時に甘くなりがち」とか、ロンドゥジャンブアテールなら「アンディオールよりも、アンデダーンの方が足りなくなる傾向がある」など、割と人数的に多いな…という動作があったら、それがその動作の「キーポイント」の可能性が高いですから、あなたがバーを行うときは、そこを気をつけてみましょう。
また、チェックしたことができていることによって、それ以外も良くなっていることがあります。
「頭の位置を変えることによって、この人は背中が入ったんだな」とか
「骨盤の位置を変えることによって、デリエールで腰が高く上がるようになっているな」など
相乗効果がある人がいたら、よーく目に焼き付けてください。
あなたが次に目指すものかも知れませんし、「連鎖」を実感する良い機会です。
体は良い意味でも、悪い意味でも、連鎖することで動いています。
バレエで「ここを変えたら、良い意味でここがよくなった」というものが見えるようになると、レッスンでも、目に焼きついた光景へと導かれていくでしょう。
まだまだ、バーを2つに分ける訳、本当はあります。
でも、ちょーっと難しい話になりますので、みなさんは、ここを頭の片隅に入れてレッスンしましょう。
これだけ、バーレッスンを活用できたら、ただ動いてレッスンするだけよりも、天と地ほどの差が出てくるはずですよ。
自分の番ではないとき、もちろん、休憩に使っても良いですが、体力的に無理でなければ、どんどん観察する習慣をつけましょう。
同じクラスのバーレッスンを観察する機会は、ほとんどありませんから!
そのうち、人の動きを見ることが、楽しくなるかも知れません。
※1 フルレッスン等は除く