道標があるから、
目的地に辿り着ける。
序論:あなたの健康のためにも
”膝を伸ばす”動作は、重さをかけることで動いてしまいがちだ。
長年こうした動かし方をしていると、バレエをやるやらない関係なく、痛みを伴う悩みに直面する日が来るだろう。
最も大きな原因に、方程式の欠陥があげられる。
ここでは、バレエと日常生活に関連した “膝を伸ばすという動作の2つの方程式” について述べる。
本論:知っておきたい2つの方程式〜支持脚・動作脚の膝を伸ばす〜
本論1:卒業したい発想
方程式に入る前に、卒業したい発想について話しておく必要があるだろう。
つまり、”適切ではない解釈” を除外しておく必要がある。
脚全体を、フトモモと膝下に分けよう。
大抵は、フトモモと膝下の両方を動かすことで「膝を伸ばそう」とする。
おそらく、このような「伝言ゲーム」になっているのではないだろうか。
・膝を伸ばす=膝を動かす
↓
・膝 “関節” を動かす
↓
・関節は、骨と骨のつなぎ目のこと
↓
・ということは、骨と骨を動かす=関節を動かす
↓
・つまり、フトモモの骨と膝下の骨を動かす=膝を伸ばす
この発想は、初心者や無知なタイプよりも「中途半端に解剖学・物理学を勉強しました系」に多い。
生徒だけでなく、教師でも多いのが厄介である。
一通り勉強し咀嚼した教師が、解剖学や物理的な “難しいこと” をレッスンで言わなくなっていくのは、本質が見えているからである。
解剖学や物理学に関したことを言わないからといって、教師が知らない・勉強していないとは限らない。
もちろん、そのケースも多いとは思うが、ぐるっと一周回って、敢えて言わない教師だっているのだ。
話を戻そう。
つまり、上に記した「伝言ゲーム」からは卒業したいのである。
膝のお皿の上と下を上下に引っ張りあうだとかいった、動きの方程式ではない解釈を排除して、正しい知識を受け入れる準備をしよう!
本論2:CKCでの膝を伸ばす
●参考● 運動連鎖 CKC・OKC については、こちらの記事に掲載しています。
日常では「階段を昇る・椅子から立ち上がる」など、CKCでの “膝を伸ばす” が比較的多い。(注1)
CKCでは、地面に近い部位を基準にする。
例をあげよう。
階段を昇る
・片脚を一段上の階段にかける。
↓
・膝下を基準に、フトモモを動かすことで昇る。
(脛は立てた状態が望ましい)
椅子から立ち上がる
・椅子に座っている。
↓
・膝下を基準に、フトモモを動かすことで立ち上がる。
踏み込むときに、膝をグッと前下方に突き出してしまうと、膝下の固定は失われる。
膝下を基準にし、その上方にフトモモを揃えようとするときに「床を踏む・踏ん張る」という力のかけ方が加わる。
この「床を踏む」は、ジャンプでの床を圧す・蹴ると同じ状況である。
日常生活動作(ADL)を正しく行うことで、動作システムを覚えたい。
本論3:OKCでの膝を伸ばす
バレエでは、動作脚の曲げ伸ばしが非常に多い。
バーレッスン後半には、怒涛のように登場する。
・バットマン・フォンデュ
・バットマン・フラッペ
・プティ・バットマン・シュル・ル・ク・ドゥ・ピエ
・ロン・ド・ジャンブ・アン・レール
前半に登場する
・バットマン・タンジュ
・バットマン・タンジュ・ジュッテ
・ロン・ド・ジャンブ・アテール
これらは、膝を伸ばしたまま動くステップなので、前者と後者の違いは対称的である。
OKCで膝を伸ばす場合は、CKCとは基準が逆転する。
つまり、フトモモを基準にして、膝下を動かすことで膝を伸ばすのである。
フラッペならば、フトモモの位置を変えずに膝下を動かすことで “膝を伸ばす” となる。
ク・ドゥ・ピエでフトモモを手でつかんでもらい、位置をキープしたまま、膝下を動かしてみるとわかりやすいだろう。
結論:基準を明確に
膝を伸ばすとは、
×:フトモモと膝下の両方を動かす
○:どちらかを基準にし、もう片方を動かす
この方程式は、体の動かし方として必要だ。
CKCもOKCも、両方を必要としている。
バレエでも、日常生活でも。
方程式に則った、正しい動かし方を身につけよう。
●参考● CKCでの動き方例
25ページ〜27ページをご参照ください。
大人のバレエ 踊りやすくするためにカラダを整える[バレエ参考書]