10回やって出来なければ、
11回目に希望を持つ。
100回やって出来なければ、
101回目に希望を持つ。
序論:ルティレ、2つの軌道
ルティレの軌道は、2つに分類する事が出来る。
1つは、第5ポジションから、直接ルティレになる場合。
もう1つは、バットマンのように膝が伸びた状態から、ルティレに入る場合である。
ピルエット・アンディオール(以下、ピルエットと記す)で用いられるのは、前者である。
第4または第5ポジションから、ルティレに入る。
本稿では、ピルエットで使われるルティレの注意点、即ち、バレエポジションからルティレを作る際の注意点について述べる。
本論:ピルエットでルティレが閉じてしまう|作り方と注意点
本論1:大人は、差が現れやすい
ルティレやクドゥピエは、膝を伸ばしたまま行うバットマン・タンジュやジュッテ、グラン・バットマン等と比べて、厄介な動きである。
体の成長期を迎える子供は、特別何もしなくても、筋力がつく時期である。(バレエに必要な分を満たせるかは別として)
大人の場合、何もしなければ衰えるのは現実であり、ここを受け入れるのか、逃げるのかで、道は大きく分かれる。
ルティレやクドゥピエ、もちろんプリエもだが、膝を曲げる動作が含まれるものでは、この辺りが顕著に現れる。
ピルエットでは、ルティレの形が取れる事が必須である。
”回るコツ” という類のものは、これが出来た上での話で、ルティレの形が取れずにコツを覚えて回れたとしても、バレエのピルエットとして認めてはもらえない。
さて、回る+ルティレという複合性のあるピルエット。
ルティレはアンディオール、つまり、開いていなければならないが、閉じた状態になってしまう事があるだろう。
この状態は、教師の目には、”意思のない、ぼんやりとした動き” に映りやすい。
故に、意思を持って動くことを提案する。
全く、その通りである。
その上で、1つ問題となるのは、”意思の持ち方を理解しているか”という点である。
何を、どうしたら良いのかがわからないようでは、意思の持ちようがない。(注1)
ピルエットでルティレが開かない場合、その多くは、ルティレの作り方を知らない、もしくは、アバウトである事が多い。
これでは、意思を持ちにくいのも仕方がない。
本論2:動きの頂点までの行き帰り
ピルエットで見かける、あと一息のルティレ。
1つ目は、ルティレを頂点とした行き帰り、軌道である。
ポジションからルティレに行き着くまで、ルティレからフィニッシュに行き着くまでの間に、支持脚からつま先が離れてしまう。
ちなみに、ランジの第4ポジションに着地する場合、確かに、ルティレからつま先は離れてフィニッシュする。
それを前提として、動作足のつま先が “最短距離で” フィニッシュに持ち込むという点において、考え方は同様だ。
体が前傾し、お尻を突き出し、つま先は後方にブラブラと離れてはならない。
最もシンプルな方法で、ルティレを試してみよう。
バーに立ち、第5ポジション→ルティレ→第5ポジションに収める。
動作脚のつま先は、支持脚を擦ってルティレに到達し、同様に、支持脚を擦って第5ポジションに収める。
やんわりと、ふわふわと行ってはならない。
猛烈なスピードでルティレに達し、ルティレでピタリと動きを止め、猛烈なスピードで第5ポジションに収めていく。
タイツやウエア(ジャージなど)の擦れる音が、はっきりと聞こえるほど、一気に素早く、力強く、支持脚を擦る。
特に、ルティレから第5ポジションに収める際に、このことを忘れがちである。
スピードと力強さ、大人が苦手とするところだが、意識して、実行すれば、確実に変わる。
苦手=出来ない、ではない。
適切に動く事で、必要な筋が育ち、瞬発力が身に付く。
本論3:動きの順番
もう1つの、あと一息なルティレ。
その原因は、ルティレよりも手前の動作、クドゥピエに行き着くまでに、既に現れている。
この時点で、間違いが生じているという事だ。
このような作り方は、間違っている。
足裏が床から離れる。
↓
膝を外に向ける。
これならまだいいが、膝を外に(横に)向ける事を忘れてしまっている場合もある。
また、膝の向きを忘れていると、パラレルとも、オープンルティレとも言えない、なんとも中途半端なルティレが出来上がる。
いずれにせよ、この方法では、アンディオールが完全に抜けてしまう。
特に、膝下のアンディオールが欠如する為、関節的に、カマアシを作りやすくなってしまう。
残念ながら、良い事は何もない。
正しい方法は、次の通り。
膝の位置・向きを決める。
↓
かかとが床から離れると同時に、膝を決めた位置・向きに持っていく。
↓
足裏を床から離す。
先に、膝の位置・向きをとってから、足裏が床から離れ、クドゥピエへ。
そして、ルティレに到達する。
膝が先行して、ルティレを作っていく。
これは、ピルエットでも同様で、回るときは必ず、ルティレの膝が先行する。
そうしなければ、アンディオールされたルティレを提示する事が出来ない。
ルティレになってから、膝をグイッと引くのはNGだ。
最初から、開いた形を提示しよう。
結論:試される ”根気強さ”
つま先と膝。
すばやく動く事で、形の保持が可能となる。
タイミングをずらし、調整する事で、同時に動いた事になる。
言葉で表す、理解する事は、なかなか難しいが、何をすれば良いのかがわかれば、あとは、やるだけだ。
バーに立ち、確認してみて欲しい。
”意識すれば出来る” うちは、ピルエットになると、恐らく、抜けてしまうだろう。
無意識でも出来るようになった時、確実に、ピルエットに反映されている。
何十回、何百回、何千回と、何回でも繰り返す、根気強さが試される。
故に、誰にでも出来ることではないのである。
誰にでも出来ることへの価値は低い。
誰にでも出来ることではないからこそ、価値が上がるのである。
価値あるものを手に入れようとする、気持ちの準備が、あなたにはあると思う。
手に入れる資格がある。
何回でもトライしてみて欲しい。
100回やって出来なければ、101回目に出来るかも!と、希望を持ってトライするのだ。
さあ、やってみよう!
注1:意思を持ってレッスンする。レッスン前に準備出来ること。