「足首だけで開かないで」という言葉。
個人的には、使わない言葉の1つです。
その上で、「では、何をしたらいい?」が提示されにくいのも事実。
実際に行うべきアクションについて、わかりやすく解説します。
「足首だけで開かないで」非常に誤解の多い言葉で、個人的には【根絶したい指導言語の1つ】です。
なぜなら、膝とつま先の正常な向きについての正しい知識が浸透していないからです。
これは、体のことを勉強しているタイプに多い誤解。
ケガを恐れるあまり、長期間に渡って体を痛めつけるような方法をとっていることに気づくことがありません。
結果として、正常な可動域をバレエによって失ってしまうという由々しき事態が多く発生しています。
あなたの健康のためにも、正しい【知識】を得て、正しく【活用】しましょう。
使いようによっては、知識も雑学になってしまいます。
全ては、あなたの腕次第。
【コラム:ちょっとだけ難しい話】
バレエのための解剖学、バレエに活かす解剖学。●●のための〜とよく耳にします。ですが、バレエ云々の前に1人の人間であることを忘れてはなりません。
バレエを踊るマシーンを作るならともかく、1人の人間がバレエを踊ることを考えるのであれば、まずは「人間の体」を知る必要があります。今の問題点は、人間の体の仕組みや可動域、どういう状態が中間位なのかをすっ飛ばして、骨や筋肉ばかり捉えようとするところにあります。バレエでいうニュートラルは、人間の体としてのニュートラルではないことが多いのが現状です。
背景を読み取ろう
「足首だけで開かないで」
最初に使われたであろう稽古場のシーンを推定してみましょう。
ここでは、わかりやすく3つにわけてみます。
- 足首「だけ」、足首「を」ではない。
- 重さの処理をしているか。
- 足が脱力していないか。
①足首「だけ」、足首「を」ではない。
「足首だけで開かないで」最初にこの言葉を使った人が、本当にこうおっしゃったのならば、決して間違いではありません。
「足首を開かないで」とは言っていませんから。
脚の付け根から開くことにこだわりすぎて、足首のアンディオールを忘れてしまっているケースがあります。
もちろん、太腿から開くわけですが、恐らく「太腿をしっかり開いてから、足首を開いてね」という意味だったのでしょう。
ちなみに、どんなに可動域が広い人でも、股関節の可動域だけでバレエポジションをとることはできません。
太腿から開くことは大切なことですが、足首を使わないわけではないということは、しっかりと認識しましょう。
【あわせて読みたい 脚のアンディオール、その方法】
②重さの処理をしているか。
「今日からバレエをはじめます!」という人が、先生のよく開いた第1ポジションを目にしたときにやりがちなこと。
- 足を一直線にする
- 膝を曲げ、膝のお皿を前に突き出す
- お腹を突き出し、背中が倒れている
ものすごくざっくりした言い方をすると、まっすぐに立たずに、足だけ形を作ろうとしている。
筋肉を活動させず、体を引き締めることなく、体のパーツを前後にずらしてしまっている。
これをやってしまうと、重力によって上から下へと流れる体重が膝や足首へと流れてしまいます。
片足になるだけで股関節には、体重の3倍の負担がかかると言われています。体重が50キロの場合は、片足になっただけで150キロもの負担がかかっているのです。引き上げようと意気込む前に、脚にかかる重さを減らすことを考えましょう。体が高いまま着地する、降りる、プリエする。それが“引き上げ“です🍎
— 大人のバレエ上達 JBPおニャーさん (@junkotomono) January 20, 2022
流れる重さの大きさは、体重として表れる数字ではないことにも注目しましょう。
関節に重さがかかるほど、関節を磨耗したり、大きな事故にあうリスクが高くなります。
このようなことを避けたいがために「足首だけで開かないで」という言葉が出ているのであれば、何をするかは明確。
まっすぐ立つこと、全身を引き締めて立つことです。
③足が脱力していないか。
バレエポジションを作るときは、アテールの足にしていなければなりません。
アテールの足を作ることで、縦と横のアーチが形成、それを保とうとする筋肉が活動します。
結果、物質的な硬さ(剛性)を獲得し、重さや衝撃から足を守ります。
アテールとベタ足は異なります。
足がリラックス状態で床に着き、バレエポジションを作ってしまうと、足に体重がかかったときに足自体が変形を起こしてしまいます。
すると、足部や足首に体重がかかりすぎてしまうのです。
体重がかかっても変形できない硬さが必要です。(剛性が必要な理由の1つ)
【あわせて読みたい アテールについて】
「足首で開かないで!」という言葉が出たであろう背景や、先生が口にしやすい状況が理解できたと思います。
では、何をすればいいのでしょう。
順を追って確認します。
前提になること
しつこいかもしれませんが、大事なことなのでここから整理。
- まっすぐに立ち
- 膝を伸ばして立っているかを確認
- 全身を引き締め、体の緊張感を保つ
補足をします。
まっすぐ立っているかの確認をするときは、体の正面からではなく、側方を鏡で見ましょう。
横から見た体の配列が、高層ビルのように、積み木を重ねたようになっていますか?
脚の付け根やみぞおち付近など、「くの字」に折れ曲がっていたら修正しましょう。
また、引き締める、緊張感を保つとは「全力で力を込める」こととは異なります。
いつもより、良い姿勢を保とうとすれば、それなりの緊張感は生まれるものです。
3つの工程
「足首だけで開かない」と言われないために、そうならないために。
第1ポジションの作り方レシピをお伝えします。
他のポジションは、このまま、足の位置を変えるだけです。
- 膝を伸ばした状態で
- アテールの足を作り
- つま先を床に着け、位置を決めてから踵を下ろす。
補足
①:膝を曲げた状態で足を開こうとすると、膝と足首を捻った状態で体重がかかりすぎます。
膝を伸ばし、ギブスをはめたように固定した状態でポジションを作ります。
③:踵に体重をかけ、つま先を浮かせて第1ポジションにする方法は、「第6→第1」にするときなどに用いられることがあります。
その場合でも、第1ポジションを取ったら、つま先に体重をかけ、一度、踵を浮かせて位置を取り直しましょう。
言葉が生まれた背景を推察したり、その言葉が用いられる言葉のシーンを理解しましょう。
どのようなことが言いたかったのか、何を伝えたかったのか、あるいは、何をしたら良いのか。
言葉を発した本人以上に、具体的に知ることができます。
そうすることで、あなたが今、何をしたら良いのか、何をしたら良くなるのかが見えてきます。
- 指導言語にある背景を想像してみましょう。
- アンディオールは太腿だけでは完成しません。
- 足部も忘れずにアンディオールしましょう。
- まっすぐ立つ、緊張感のある体でレッスンに臨みましょう。
- 3つの工程を守って、バレエポジションをつくりましょう。
ファーストステップ♪
3つの工程で第1ポジションを作ってみよう!
【Thank you】
JBPでは、大人の方が最適に踊れ、かつ、今後の日常生活にも望ましい基準を定めています。
あなたが基準に沿ってレッスンすることは、バレエを愛する大人に安全で適切な基準と方法を提供することにつながります!