大人のバレエ、ほぼ100パーセントと言って良い
可動域減少の犯人。
本ページに記載の(図)に関しては、大雑把にイメージするものとして書いてある。
厳密な詳細については、専門のイラストなどをご覧いただきたい。
ここではあくまで、大まかなイメージ図として掲載していることをご了承いただく。
序論:現状で起きていること。
バレエにおいて「脚を開き、外向きに保つこと」は、重要な要素であり、アンディオールの一部を形成する。
股関節可動・可動域、開く・回す、アンディオール。
これらを拡大・増強しようとしがちだが、大人からはじめたバレエの場合、そもそも、現状の可動域で開けるところまで開けていないケースがほとんどである。
これは、裏を返せば、股関節可動・可動域、開く・回す、アンディオールを拡大・増強しても、動作においては反映できないことを意味する。
大人の場合、関節可動域が “今と変わらない状態で” 現状より「開く」ことは、可能である。
拡大・増強し、バレエに反映したいのであれば、少なくとも、現状の可動域で可能な「開く」ができていないと、何も変わることはない。
本論1:原因は「関節可動域」ではない。
まず、OKCでどの程度開けるのかを確認したい。(注1)
長座でも、仰向けでも良いが、重さの影響を受けにくい状態で、極端に開けない場合、疾患等の可能性もあるので、一度、バレエを中断して専門家の意見を聞いた方が良いと思われる。
ケース1
OKCと立位でのポジションで、開ける角度が異なる場合。
つまり、OKCでは開いているのに、実際に立って、1番ポジションや5番ポジションを取ろうとすると、OKCのようには開けないというケースである。
この場合、関節可動域等に問題があるわけではない。
OKCとは異なり、CKCでは「体重の処理」をしなければならない。
エクササイズやワークが上手にできても、実際の動きに反映できないタイプは、大方、ここでつまずいている。
適切な体重処理がされていない場合、立位になった際、股関節や膝、足首、足部等に重さがかかり、動きに制限がかかる。
もちろん、リスクも上がる。
関節に重さをかけないということは、リスクヘッジと同時に、可動を高める上で必須条件である。
大人が子供と同じ体ではない以上、子供以上に重要なことである。
子供と同じことをしていても、思うような結果は得られない。(注2)
もう1つのケーススタディを取り上げようと思う。
言葉にすると「私なんて…」と思うかも知れないが、意外と多いケースである。
ケース2
脚は上がるが、1番や5番といったCKCでの「バレエポジション」で開くことができない。
これは、大人に多いことではあるが、子供でも一定程度、問題を抱えているケースが存在する。
ここでは、大人に絞って述べていく。
脚は上がるが…というと「いやいや、私はそもそも、頭まで上がっているわけではない」と思う方が多いであろう。
しかし、大事なことなので、思い過ごさず冷静に見極めて欲しい。
脚の高さに比例して、ポジションが開いているだろうか?
パッと見た目、目を引くほどに高さが出ていなかったとしても、高さとCKCでの開き方が比例していなければ、原因がここであるケースが非常に多い。
まず、整理しよう。
繰り返しになるが、OKCで一定程度開いているのに、CKCにおいて開けない原因は「関節可動域」ではないということ。
そもそも、関節可動域自体に問題を抱えている場合、OKCにおいても何らかの支障が出る。
何でもかんでも、関節可動域のせいにしていると、大人が武器にすべき「硬さ」を失ってしまう。
硬さは、バレエにとって武器となる。
特に、大人にとっては。
上げている脚(足)というのは、OKCである。
つまり、重さの影響を受けにくい。
だからこそ、CKCよりも可動が出やすい。
ところが、それを支えている支持脚(足)や1番・5番といった、地面に固定されている場合はCKCである。
つまり、重さの影響を著しく受けてしまう。
もうお分かりだろうが、ケース1と同様、問題となるのは可動域ではなく、重さによる影響である。
体重処理がうまくいっていない。
いずれにしても、体重処理がいかに重要か、お分かりになるのではないかと思う。
もっと専門的な話になると「重力」による影響を加味しなければならないが、複雑になるため、ここでは省略する。
本論2:関節の動きを妨げないために。
大人は、骨盤前傾による「悪循環ループ」を持っている人が多い。
これは、ADL(日常生活動作)においても発生しており、本来、バレエレッスンをすることで改善傾向に向かうべきことではあるが、認知度が低いために、ほとんどの人は、このループから抜け出せずにいるのが現状である。
これは、一刻も早く手放したいループである。
ここが変わることで、次から次へと、問題解決へと向かう人は非常に多い。
故に、大人の指導において、一刻も早く手を付けるべき項目であることは間違いない。
まず、骨盤を後傾方向に動かすことからはじめる。
そして、股関節伸展を取ろうとすることが重要である。
ただし、この状態でバレエの形式を取る場合、一定程度の腹部の強さが必要となる。
腹部があまりにも弱いと、脚が割れてしまい、意味を無さないからである。
その場合は、腹部の筋力トレーニングなどが有効である。
これだけでは、まだ体重処理は叶わない。
ポイントとなるのは、「下腹」である。
下腹がどの方向を向いているか。
注意深く、指導をする必要がある。
次に、骨盤前傾からはじまる負の悪循環ループを持っている場合、鳩尾周辺と腰部に過剰に力が入っていることが多いことを、知っていただきたい。
腹直筋と呼ばれる大きな筋がある。
腹直筋上部の過剰な緊張により、腰が硬直し、体重がウエストから下、全ての関節にかかってしまっているという具合だ。
股関節、膝、足首、足部。
これらの関節に重さがかかるため、リスクが上がるうえに、本来持っている可動を妨げてしまう。
重さの影響によって、可動を妨げられている場合は、関節に重さがかからないようにすることが先決である。
そのためには、下腹の向く「方向」が鍵となるのである。
結論:緩和とアライメント、意識付け。
下腹が出ているということは、見た目だけの問題に留まらず、体の機能面にも影響を及ぼしている。
骨盤のポジションを取ることだけでは不十分で、骨盤プラス、下腹に対してのアプローチが必要となる。
腹直筋上部と腰部の過剰な緊張を緩和させること(注3)が必須であり、これだけで違いが現れるケースも存在する。
その上で、骨盤と下腹の向きを操作することが求められる。
何より、「下腹ぽっこり」を人に見せないという意識が、この問題解決への一番の近道であることは、長年の指導経験から間違いないことだと言うことができる。
その上で「体重処理の方法」を知っていれば、鬼に金棒である。
注1:OKC・CKCに関しては、こちらの記事をご参照いただきたい。
注2:こちらの記事にて、大人と子供の違い例を記してある。
注3:JBP リリースエクササイズ 「腹直筋リリース」がダイレクトなアプローチとなる。
テキスト『リリースエクササイズ』
<参考文献>
電子書籍 大人のバレエ なぜ上達しないJBP著
電子書籍『大人のバレエ なぜ上達しない』
テキスト リリースエクササイズ JBP著
テキスト『リリースエクササイズ』